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未来の会

第47回 厚労族議員の相次ぐ引退で省内改革は進むか

第47回 厚労族議員の相次ぐ引退で省内改革は進むか
「厚労幹部会」を率いた伊吹文明元衆院議長

 厚生労働分野に影響力を持つ複数の衆院議員が、10月21日の任期を最後に引退する。その「大物」議員とは、伊吹文明元衆院議長や塩崎恭久元官房長官、川崎二郎元厚生労働相だ。これまで人事や政策に介入してきただけに、「大物」議員の引退で厚労省の実務も様変わりする可能性がある。

 伊吹文明氏の引退表明は厚労省内でも驚きを持って迎えられた。伊吹氏は大蔵官僚を経て1983年に旧京都1区(京都市)で初当選した連続12期のベテラン。文部科学相や財務相、労働相、国家公安委員長と複数の閣僚を経験し、党務でも幹事長を務めた。「イブキング」の異名で各省庁にも顔が利いたが、特に厚労省に影響力が大きいとされる。力の源泉は、橋本龍太郎元首相から引き継いだ「厚労幹部会」と呼ばれるインナー会合を率いた事だ。重要政策を決める局面で事務次官ら幹部職員を集めて開催され、政策の方向を指示した。人事面でも二川一男元事務次官が次官を続投する際に影響力を行使した事もあった。

 厚労省幹部は「実は近年、幹部会の影響力は落ちていた。省庁側に注文するばかりで具体的に根回しにも動いてくれないから職員の心は放れていた」と明かす。実際に、2年に1度の診療報酬の改定では、決定間際に幹部会が開催されても、近年は改定率がその場で報告される事はなかった。日本医師会関係者は「伊吹さんは製薬側の人間なので信用ならなかった」と明かす。別の厚労省幹部も「伊吹氏は厚労行政全般というより、製薬業界と生活衛生組合から絶大な支援を受けているので、こうした分野への関心が強かっただけだ」と指摘する。今後の幹部会は幹事長を務める尾辻秀久元厚労相(参院議員)を中心に運営されるとみられるが、田村憲久厚労相への「一極集中」がより進み、その影響力は更に低下する事になりそうだ。 

 70歳と比較的若かった塩崎氏の不出馬も「意外だった」(職員)。日本銀行職員から転身して旧愛媛1区(松山市)から出馬し、93年に初当選。党内でも政策通として知られる当選8回のベテランだ。「官僚嫌い」として知られ、第1次安倍晋三内閣で官房長官を務めたが、調整不足で「官邸崩壊」を招いた主犯とされた。

 厚労相時代も受動喫煙対策を強化する健康増進法の改正を巡り、自民党と対立した。当時、健康局長だった福島靖正医務技監を幹部人事で省外に出したり、年金や児童福祉分野での政策の方向性を巡って香取照幸雇用均等・児童家庭局長(当時)とも対立したりした。伊吹氏との折り合いが悪く、幹部会のメンバーにはなれなかった。 

 松下電産勤務を経て80年に初当選した川崎氏は当選12回。運輸相や北海道開発庁長官、厚労相の他、国対委員長も務めた。厚生分野には入り込む余地はなかったものの、党雇用問題調査会の顧問を務める等、労働分野に一定の影響力を行使した。

 鴨下一郎元環境相も引退する。田村氏の入閣後は社保分野を取り仕切る立場だったが、「存在感は乏しかった」(厚労省職員)。

 一時代を築いた大物議員の引退を機に、厚労行政の運営も変わらざるを得ない。こども庁発足等の再編も取り沙汰されており、今後、省内で改革の機運が高まるのか注目される。

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