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無罪に終わった「ディオバン事件」

無罪に終わった「ディオバン事件」
無罪に終わった「ディオバン事件」

 製薬会社「ノバルティスファーマ」の降圧剤「ディオバン」を巡る論文データ改竄事件で、薬事法(現・医薬品医療機器法)違反(誇大広告)罪に問われていた同社の元社員(70歳)と法人としての同社の無罪が確定した。最高裁第1小法廷が6月28日付で、裁判官5人の全員一致で無罪を不服とした検察側の上告を棄却したのだ。1、2審判決の「無罪」が最高裁でも維持された形だ。

 争点となったのは、同社が改竄したディオバンの臨床データを研究者に提供し虚偽の論文を書かせて学術雑誌に掲載した行為が、薬事法が規制対象とする「広告」に当たるかどうかだ。最高裁は「虚偽の論文を掲載した雑誌は研究者や医師ら医学の専門家を対象にしており、学術研究成果の発表である」と判断。顧客の購入意欲を誘う広告には当たらず、薬事法に違反しないと結論付けた。

 「最高裁で1、2審の判断が覆る可能性は低かったものの、東京地検特捜部が手掛けた事件が無罪になるのは異例の事」と社会部記者。最高裁は「学術研究成果の発表は、同一分野の専門家らによる検証、批判にさらされ、内容の正当性が確認されていく事が予定されている」とも指摘し、研究不正に対しては、専門家の間で厳しく対応していく重要性に触れた。

 一連の問題が発覚したのは、医師による追究がきっかけだった。「刑事罰がないとしても、製薬企業の社会的な責任は免れない」と同社関係者。ディオバン事件が、医師と製薬企業との馴れ合いに一石を投じた事は間違いない。

ワクチン接種加速で見えた危うい首長」

 全国の自治体で新型コロナウイルスワクチンの接種が進められる中、ワクチンに疑問を持つ首長の妙な行為が話題となっている。

 問題となったのは、大阪府泉大津市の南出賢一市長(41歳)だ。「同市が市民に送ったワクチン接種券に市長からのメッセージという紙が同封されており、そこにあった文言が話題になったのです」(科学誌ライター)。

 同市ホームページから同文書を閲覧すると、まず目に入るのは「新型コロナワクチンの接種は強制ではありません」の一文。太字に下線まで引いてある。接種出来ない人への差別を防止するためにこの呼び掛けは良いとしても、文書は更に「ワクチン接種による感染予防効果や中長期的な人体への影響については明らかになっていません」という文言が太字で続く。「よって、年代ごとの重症化率や死亡率等も下表『大阪府内の状況』をご参照の上、接種の判断をしていただけますと幸いです」と、若年層では極めて低い死亡率の表を掲載し、明らかに接種に否定的な印象操作をしているのだ。

 「ワクチンは自身の発症予防や重症化予防の目的が一番だが、今回のような大規模な接種では集団免疫の獲得が目的の1つでもある。自身だけでなく、周りを守るという意識が欠かせない」と感染症に詳しい医師。この文言にはそうした予防接種の意義等の記述は一切ない。

 更に、接種事業が進む6月30日に市HPで更新された南出市長の「市長コラム」が驚きに拍車を掛ける。タイトルは「免疫力を高め、感染しにくくする。かかったとしても重症化しにくい身体づくり」。「コロナに限らず」と断ってはいるが、「マグネシウム鼻うがい」や「抗酸化、抗炎症の食事を意識する」等、食生活や生活習慣についての情報を細かく紹介しているのだ。

 「泉大津市議を経て16年に市長になった南出氏は現在2期目。ツイッター等でも、重症化を予防するために漢方や代替医療を発信しており、反ワクチン集会にも出席した神戸市のクリニック医師との関係も取り沙汰されている」と前出のライター。科学的に正しい情報を市民に届けるのが市長の役割なのだが……。

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