コロナ第5波に備え10月以降の支援の早期提示を
2020年度の病院経営は、行政の支援金を加えると医業収支はプラスだが、個別病院の状況を見ると支援金の入金遅れ等の影響でマイナス30%等の厳しいところもある—。
今春以降の新型コロナウイルス感染症第4波の影響を受けている医療機関が多い中、今後も病院機関支援策の継続が必要である事が、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会による病院経営状況調査で分かった。
3団体は加盟病院を対象に4半期ごとに合同調査を行っている。今回の調査期間は4月12日〜5月21日で、3団体の加盟病院4410病院を対象にメールで調査票を配布。有効回答数は1277病院で、有効回答率は29.0%だった。3団体は20年度第4四半期(21年1〜3月)と20年度通年の調査結果をまとめ、6月3日に公表した。
通年の調査結果では、通年の状況を全て回答した716病院の19年度と20年度の医業利益率を比較した。それによると、▽全病院(716病院)で平均4.3ポイント悪化▽コロナ患者を受け入れた病院(452病院)で平均4.7ポイント悪化▽コロナ患者を受け入れていない病院(264病院)で平均1.4ポイント悪化▽一時的に外来を閉鎖した病院(272病棟)で平均6.1ポイント悪化した。コロナ患者を受け入れた病院と一時的に外来を閉鎖した病院で厳しい結果が出た。
しかし、国や都道府県によるコロナ対策の支援金(医療従事者への慰労金は除く)を加えると、▽全病院で平均2.1ポイント改善▽コロナ患者を受け入れた病院で平均2.4ポイント改善▽一時的に外来を閉鎖した病院で平均2.3ポイント改善した。コロナ患者を受け入れていない病院では平均0.3.ポイント悪化したが、支援金がなければ全てがマイナスポイントだった。
支援金を加味した医業利益率の分布から、マイナス30%からプラス30%まで、病院間で大きなバラツキがある事も分かった。
また、国の支援金の入金率は76.0%、都道府県独自の支援金の入金率は74.8%で、支援金の入金は一定程度進展した。しかし、国の予算でも実務は都道府県が担う事が多いため、鳥取県の98.9%から奈良県の35.7%まで、地域によるバラツキも大きかった。
第4四半期の状況を見ると、前年同期と比較して入院患者の減少が続いている事が明らかになった。この期間の病床利用率は5ポイント以上減少していた。外来患者に関しては、昨年3月には既に患者数が減少していた事から、今年3月の外来患者数は低水準ながら対前年比で増えていた。しかし、救急受け入れ件数や手術数は前年比で減少しており、低水準で推移していた。緊急手術は前年同期とほぼ同じ水準が維持されていた。
感染力の強いデルタ株の感染が拡大し、第5波の懸念が高まる中、3団体は「患者の急増により全国の医療機関は懸命に地域医療を守るために戦っている。今後も継続的な医療機関支援が地域における医療提供体制の維持に不可欠」とコメントしている。
また、国立大学病院長会議が7月9日に発表した20年度の国立大学病院の決算(速報値)によると、42大学(45附属病院)全体で対前年度比412億円の減益だった。新型コロナの影響で診療収入が199億円減となる一方、人件費と診療経費が計213億円増となった事等が影響した。しかし、支援金が698億円入ったことで、最終的に経常利益は243億円のプラスになった。ただ、支援金は10月以降が未確定な事から、横手幸太郎会長(千葉大学医学部附属病院長)は「非常に心配な状況にある」と懸念を述べた。
高度医療機器に関しては、各病院は14年以降、減益傾向が続いているため、設備投資を抑え老朽化が進んでいるという。横手会長は「これ以上、老朽化すると限界点に達し、事業継承の危機が迫る」と支援の継続を訴えた。
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