国は接種を推進する一方で、不足を把握していた疑念
新型コロナウイルスの、ワクチン接種を巡っては、各地の自治体で新規予約を停止する動きが相次いでいる。新規感染者が高止まりしている大阪府の医療機関でも、“寝耳に水”のような状況でワクチン供給量削減の連絡が来た。住民にワクチン接種を行ってきた医療機関は、情報不足と方針転換に戸惑いながら時間と人員を割いてきただけに、大阪府保険医協会は国に対する疑念を示すとともに、国民に対する説明責任を求めている。
大阪府医師会から「緊急連絡」という書面が6月28日、大阪市内の新型コロナワクチン個別接種を取り扱う医療機関に届いた。その内容は、「先週、各医療機関から発注があったワクチンに関しては、発注量から1割減をした上で(大阪市医師会から)各医療機関に供給予定」というものであった。
また、6月30日付の「続報」では、「7月5日週の供給量について、おおむね1〜3割を減じた数を配送」と通知された。
更に、吹田市でも6月29日には、「8月1日以降は当面最大送量を10本/週に減らしての対応」を依頼する旨の書面が、市医師会から市内医療機関に送られていた。
大阪府保険医協会には、「8月いっぱい予約が詰まっている。急に減らされて困っている」「保健所に問い合わせたらキャンセルの連絡をして欲しいと言われたが、簡単な事でない」「国から梯子を外された感じ」等と怒りや不安の声が寄せられている。また、予約がキャンセルになった人達が「やっと接種券が来たのに……」とがっかりする姿に心が痛むという声も寄せられているという。
この間、河野太郎・新型コロナワクチン接種推進担当大臣は、連日にわたりワクチン接種を進める“宣伝”を行っていた。東京五輪・パラリンピックの開催を前提に、高齢者接種の7月末完了を掲げ、つい最近では幅広い年齢層への接種開始を大きくアピールしていた。更に、ワクチン接種回数が多い医療機関に対しては、接種費用を上積みしてまで接種促進に発破を掛け続けていたのだから、医療機関の落胆や不満はもっともだ。
同協会は、7月1日に発表した声明の中で、「多くの自治体が現役世代に接種券を送付し、職域接種が開始される6月21日以前に国は“ワクチンが足りない”状況を把握していた可能性がある」と指摘する。
具体例の1つとして、以下のような点を挙げる。それは、6 月19日に開催された全国知事会の「9都道府県の緊急事態宣言の解除等を受けた緊急提言」に、「ファイザー社ワクチンの配分が7月以降急減する実情にあり、ワクチン接種を加速する流れに水を差すのではないかと懸念される」との文言があるのだ。全国知事会は国の情報を基にワクチンの供給削減について言及したはずだ。
同協会は「国はなぜ早く対策を取らず、『ワクチン接種に突き進め』と号令を掛け続けたのか。ワクチン接種が出来ると期待していた国民に対して説明責任を果たすべきだ」と批判。そして、「実態を把握せず、医療現場や全国の市町村に丸投げし、不手際に対してその責任を現場に負わせる。こうした政府の姿勢に厳しく抗議するとともに、いのちを守る事より、五輪開催に突進する姿に恐怖すら感じる」と糾弾した。
同協会は7月9日、菅義偉首相や河野大臣、田村憲久・厚労大臣に宛てた緊急要望書で、①ワクチン不足の早期解消②基礎疾患を把握している開業医に対してワクチン必要量の提供③接種予約や事務的管理等負担に見合った接種料金にする事④正確なワクチン供給スケジュールを示す事を求めた。
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