世界3位!
「論文捏造」の昭和大元講師の暴走
かねてから論文不正疑惑が伝えられていた昭和大学(東京都品川区)の医学部麻酔科学講座の上嶋浩順・元講師について、同大は5月末、上嶋氏を懲戒解雇するとともに、117本の論文を撤回するよう勧告した。上嶋氏を指導する立場にいた大嶽浩司教授は降格処分を受けた。実際に117本が取り下げられれば、世界の「論文撤回数」ランキングの3位に入る。
不正が認定されたのは、上嶋氏が2015〜20年に執筆、発表した142本の論文。「麻酔の手順をまとめた症例報告や腰神経麻酔の臨床試験に関するもの等で、このうち117本に捏造や改竄があったとして取り下げが勧告された」と全国紙の科学部記者は解説する。
驚くのは、研究をせず全てのデータを捏造していたものが75本もあった事。実在の患者の一部のデータを使って捏造したり、患者の合併症や使用した薬剤の名前を改竄したりした例もあった。研究に関わっていない大嶽氏や部下の助教らを、共著者として記載していた例も131本でみられた。
「不正は上嶋氏が論文を投稿した学術誌の編集者が日本麻酔科学会等に疑義を寄せた事で発覚した。事態を重く見た学会は調査特別委員会を設置し、上嶋氏の全ての論文を調べる必要があるとした。そこで、かつて所属したり研究拠点にしたりしていた埼玉医大、関西医大、岡山大にも調査を依頼したが、昭和大以外で不正は確認されなかった」と学会関係者。なぜ上嶋氏が昭和大で〝暴走〟してしまったのか。大学の調査結果によると、上嶋氏は高圧的で部下は逆らえなかったそうだ。上嶋氏の麻酔技術は高く、多くの論文を執筆している事から学内での評価は高かったとも」(前出の記者)。
論文不正は麻薬のようなもので、一度手を染めると歯止めが利かなくなるといわれる。論文不正調査に関わった経験を持つ医師は「不正がばれなかった事で、エスカレートしてしまったのかもしれない」と推察するが、昭和大関係者は「上嶋氏のパワハラは学内で有名だった。かばうつもりはない」ときっぱり語ったのだった。
コロナワクチンで
日医が危惧する「存在感低下」
新型コロナウイルスのワクチンを巡り、日本医師会(日医)の〝存在感〟が話題になっている。東京都中央区の「ヘルス・マネジメント・クリニック」の行松伸成院長は、医師会に入っていない事を理由にワクチンの供給を断られたと『週刊文春』に〝告発〟。一方で、日医は全国の自治体が医師会を通さずに民間の「医師派遣サービス」を使って接種者を募る事に危機感を覚えているとの話も漏れ聞こえてくる。「菅義偉首相がぶち上げたワクチン1日100万回計画で課題となったのが、〝打ち手不足〟。地域の開業医だけでなく、大学等にも医師はいるのだが、自治体によっては地域の医師会を通さずに医師や看護師を紹介する人材派遣会社と契約する例もある」と医師会関係者。
逆に自治体側からは「地域の医師会に協力を求めたが、通常診療でいっぱいいっぱいと断られた」との不満も漏れる。こうしたミスマッチが続けば、地域の医師会どころか、大元締めである日医の影響力が低下するのは避けられない。
「コロナが流行り始めた頃は、受診控えによる経営悪化や、通常より人手と資材費がかかるコロナ診療の経営圧迫が伝えられたが、協力金の大盤振る舞いのワクチン接種は久々のいいニュース。『ワクチン長者』なる言葉も生まれている」(医師会関係者)。それ故に、文春に書かれたような非会員外しが横行するのだろう。
流行終息に向けワクチン接種は重要だが、「コロナ禍と共に医師会の影響力も去る、なんてことが起きるかもしれない」と医師会関係者の心配は募るばかりだ。
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