東京女子医大の「止まらぬ人材流出」
昨年、コロナ禍による財政悪化の影響で「ボーナスゼロ」を打ち出して看護師の大量退職が伝えられた東京女子医科大学(新宿区)で今度は、医師の大量退職が問題になっている。
「昨年度末までに、同大の3つの附属病院の医師100人超が退職した」と東洋経済オンラインが伝えた。特に影響が大きいとされたのが、東京女子医大病院(本院)の内科の医師約170人のうち50人以上が退職した事。「内科はコロナ診療においても中核を担うだけに、影響が懸念されている」(全国紙記者)。
他にも、東京・荒川区の東京女子医大東医療センターで医師の2割が退職、千葉県にある「八千代医療センター」と合わせて計100人以上が減ったと同記事は伝える。「年度替わりは異動のシーズンではあるが、後任の医師が決まらず、診療に影響が出ている科もある。残った医師やスタッフの負担も増え、職員の気力は低下する一方だ」と同大病院の関係者は嘆息する。
同記事は、大量退職の原因を「働き方改革の一環で、同大が勤務医の外勤(アルバイト)を制限した事だ」と伝えた。同大の医師給与は他の病院と比べて低いが、これまでは外勤でその分を補ってきた。ところが、大学側は外勤をする場合は給与を下げると通知してきたという。
「ただでさえコロナで医療者の労働環境が悪化する中、この通知は医師のモチベーションを下げる最悪の一手だった。多くの医療機関では医師が足りておらず、慢性的な売り手市場。条件が悪くなれば、もっと良い待遇の病院に転職する事はいくらでも想像出来ただろうに……」(医療ジャーナリスト)。
医療事故により助成金が減らされる等して、厳しい財務状況が続く同大。経営の立て直しは待ったなしだが、職員が納得する形で進めなければ患者にしわ寄せが行くばかりだ。
「研究不正」研究者の再就職先は中国
研究不正が発覚して職を追われる研究者は残念ながら後を絶たないが、日本の名門大学を追われた研究者が中国に研究の場を移したという話が話題になっている。「東京大学の分子細胞生物学研究所(分生研)の渡邊嘉典元教授です。海外の生物学の学術誌に載った論文で渡邊氏が中国の江南大学所属となっていた事が発覚し、話題となっています」(科学ジャーナリスト)。
渡邊氏は生殖細胞の減数分裂に大きな役割を果たすたんぱく質「シュゴシン」を2004年に発見、ノーベル賞に近い研究者の1人とされてきた。ところが、『ネイチャー』や『サイエンス』といった著名な科学誌に掲載された「シュゴシン」等の論文にグラフや画像の捏造や改ざんが発覚し、18年4月に東大から「懲戒解雇相当」の処分が発表された。
同年2月に既に退職していた渡邊氏だが、処分によって退職金は支払われなかった。その後は英国の研究所で不正を行った研究者を対象にしたリハビリプログラムに参加していた事が伝えられ、動向が注目されていた。
分生研といえば、14年にも加藤茂明元教授の研究室で不適切な画像処理等の論文不正が発覚している。ノバルティスファーマ(本部・スイス)の降圧剤「ディオバン」を巡る研究不正や「STAP細胞」の小保方晴子氏等研究不正に世間の関心が集まっていた時期でもあり、加藤氏の不正は大きく取り上げられた。
「加藤氏は12年に東大を辞職しており、その後は中国の上海復旦大学公衆衛生学部と研究を進める等、中国と日本を往復しているようだ」(全国紙記者)。
同じ研究不正でも、医師であれば臨床にシフトする事が可能だが、医師免許を持たない研究者は復職に苦労する事が多い。研究不正は決して許されないが、日本発の有望な研究が海外に流出する事態にならないか気になるところだ。
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