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診療ガイドライン作成医師に「製薬マネー」

診療ガイドライン作成医師に「製薬マネー」
9割超が受け取り、最高額は約1665万円

製薬会社と医療関係者との金銭的な関係について、海外では透明性を高める取り組みが進んでいる。例えば米国は国が主導、医師が受け取った謝礼金額や詳細を誰でも検索出来るオンラインのデータベースが2014年から運用されている。

 日本では日本製薬工業協会(製薬協)が11年に策定した「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」に基づき、加盟社が14年から医師や医療機関に支払った金額を自主的に公開。しかし、製薬会社ごとのPDF等での公表に留まっており、医師個人が受け取った謝礼金の全体を確認する事が難しい。

 医師は治療方針や治療に用いる薬剤を決める際、診療ガイドラインを参考にする。診療ガイドラインは医師を中心にした作成委員によって執筆されるが、委員が製薬会社から支払いを受ける事で、製薬会社に有利に記載内容が歪められる懸念がある。

 特に血液内科領域は新薬の研究開発が盛んで、CAR|T細胞療法を含む高額な新薬が次々に開発されており、製薬会社の営業活動が活発な可能性がある。そこで、製薬会社の公表データを元に謝礼金データベースを構築しているNPO法人ワセダクロニクル(3月にTansaに名称変更)とNPO法人医療ガバナンス研究所は、血液内科領域で診療ガイドライン作成に関わる医師と製薬会社との金銭的関係を解析した。

 両団体は16〜17年度の2年間に製薬協加盟79社(当時)から血液内科領域で診療ガイドライン作成に関わった医師に支払われた謝礼金について、各社のウェブ公開データを集計・解析。対象は対象期間中に血液内科領域の主要2学会である日本血液学会、日本造血細胞移植学会(現日本造血・免疫細胞療法学会)の診療ガイドライン作成に関わった医師74人全員。調査の結果、製薬会社から医師への謝礼金支払いは製薬協加盟79社中44社(55・7%)で確認され、総額は3億7686万円。74人の医師中70人(94・6%)が謝礼金を受領、1人当たりの平均額は509万円、最高額は1665万円だった。

 また、新薬の承認・追加があった11社(13・9%)と承認・追加がなかった68社(86・1%)の支払い平均額は、それぞれ2279万円、186万円で、12倍以上の差があった。新薬の承認・追加によって支払額に有意差が認められた事から、製薬会社が新薬の宣伝目的で医師に支払いをした可能性も否定出来ない。

 日本血液学会では医師個人が金銭の受領データを公開しており、38人中7人(18・4%)で、このデータと製薬会社が公開する支払いデータに齟齬、すなわち申告漏れがあった。

 血液内科領域の診療ガイドライン作成委員会の委員1人当たりの平均受領額は、年間255万円だった。これは認知症疾患診療ガイドライン(約150万円)等、他の診療ガイドライン作成委員の受領額より多額だ。医療ガバナンス研究所では「診療ガイドラインの信頼性を担保するためには、製薬会社との金銭的な結び付きを減らすとともに、透明性を高める事が求められる」と指摘する。

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