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未来の会

第44回 「前途多難」なワクチン担当・林予防接種室長

第44回 「前途多難」なワクチン担当・林予防接種室長
“正念場”を迎えている林修一郎・予防接種室長

 秋と目される解散総選挙に向け、政権が今、最も神経を尖らせているのが、新型コロナウイルスのワクチン接種がスムーズに進むかどうか、だ。

 ワクチンの承認や接種方法等を所管する厚生労働省で、その〝促進役〟を担うのが、健康局健康課予防接種室だ。室長を務める人物は、省内随一の〝切れ者〟として知られる林修一郎氏(2000年、旧厚生省入省)だ。

 この林氏、官邸主導で進むワクチン接種策にイライラを隠せずにいる。将来を嘱望される中堅官僚の1人に挙げられているのだが、〝正念場〟を迎えている。

 林氏は京都・洛南高校出身で、東京大医学部を卒業後に入省した。05年にはハーバード大公衆衛生大学院で修士号を得て、健康局結核感染症課長補佐、医療課長補佐という若手医系技官の登竜門とされる部署を歴任した。

 地方自治体にも出向し、奈良県で福祉医療部長・医療政策部長として脆弱とされる同県内の医療提供の整備に向けて陣頭指揮を執った。厚労省に戻った19年4月から現職を務めている。

 林氏は同僚からの評判は良いものの、外部からは不思議と芳しくない。後輩の医系技官は「面倒見も良く、東大医学部卒だけあってさすがに頭が良い。無駄な事をせずに効率良く政策を組み立てる印象がある」と評価する。

 奈良県関係者からも「変な事を言う中央官僚はたまにいるが、そうした事もなく、とても優秀で良く出来た人だった」と評判だ。

 一方で、育ちが良過ぎるためか「偉そうで上から目線」(国会議員秘書)という声もある。メディア関係者は「ワクチンの事等で質問しても、都合が悪くなるとはぐらかしたり、一方的に決めつけたりする。挙げ句の果てに急にキレたりする。マスコミ嫌いは仕方ないとしても、これでは国民に対する説明責任を果たしているとは言えない」と散々だ。こうした評判を知る医系技官の幹部の1人は「とても有能だが、コミュニケーション能力にやや難がある。配属された当時は新型コロナが流行すると思っていなかったので、今のポジションが適正なのかは評価が難しいところ」と顔をしかめる。

 現在、希望する人へのワクチン接種は政権の至上命題となっている。当初は予防接種室主導で描いていたワクチンの接種スケジュールも、河野太郎・規制改革担当相がワクチン担当になってからひっくり返され、予防接種室の業務は河野氏の直轄のようになっている。

 予防接種室の人員は増強されているが、体制が貧弱な内閣府からは河野氏の国会答弁を押し付けられたり、自治体からの問い合わせに回答したりしなくてはならないため、深夜残業は当たり前のようになっている。予防接種室の職員は「とにかく業務が多い上に、縦割りで隣の人が何をしているか分からない状況。上に相談しても把握していない事があって困る。林室長はよくやっていると思うが、マネジメントは崩壊状態」とぼやく。

 菅義偉首相は高齢者接種について「7月末までに2回接種を終えるように取り組む」と決意を述べており、予防接種室の働きがカギになる。首相方針に対し自治体からは早くも「無理だ」という声が上がっている。林氏を取り巻く環境は容易ではなさそうだ。

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