SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

不妊治療の保険適用に 医師・患者とも「不安」

不妊治療の保険適用に 医師・患者とも「不安」
不妊治療の保険適用に
医師・患者とも「不安」 

 菅義偉首相肝煎りの「不妊治療」への保険適用だが、その道のりは険しい。厚生労働省が医療機関を対象に行った初の全国調査では、代表的な不妊治療である「体外受精」にかかる費用の平均は50万1284円。人工授精は平均3万円、男性不妊検査は平均4万5000円であり、「体外受精」が突出していた。問題は、体外受精の治療費が医療機関によって20万〜100万円と、70万円超の幅があった事だ。ここに保険を適用するとなると、当然、「全国どこの医療機関でも同じ治療費」が適用される事になるが……。

 「治療を受ける側からすると、喜んでばかりもいられない」と語るのは、不妊治療を経験した40代の女性。「不妊治療は個人差や医療機関の格差が大きい分野。治療費が高くても成績が良いクリニックは、多くの患者を集める。そうした医療機関では治療費が高い事に意味があり、治療がうまくいかなかったとしても、『ここまでやったのだから』『お金もかかるし』と諦められる側面がある」と語る。

 別の女性も、不妊治療を始めるにあたり「インターネットで膨大な情報を集め、経験者からの話も聞き、高くても評判の良いクリニックを選んで受診した」と話す。「保険がきいて自己負担が減るのは助かるが、同じ価格だと、どこの医療機関に行けばいいか不安になる」という。

 厚労省の調査では、体外受精の価格は「都市部ほど高くなる傾向にあった」といい、テナント料や人件費の影響とみられる。「働く男女が通いやすい立地は大事だし、建物の新しさや内装は、安心感を与える雰囲気づくりに関わる」と不動産関係者。保険適用により、そうした「立地」や「環境」を捨てる医療機関が出る恐れもある。

〝宮城クラスター〟の要因は
「NHKのど自慢」?

 新型コロナウイルスの流行が再拡大した事を受けて、大阪、兵庫、宮城の3府県に初の「まん延防止等重点措置」が適用された。連日、東京を超える感染者が報告されていた日本第2の人口を持つ大阪、隣県で大阪との行き来も多い兵庫は分かるとして、宮城県が含まれた事は驚きを持って受け止められたようだ。

 「確かに仙台市は東北一番の都市だが、東北各県に患者は少なく、突然増えた理由が分からない。そこで囁かれたのが〝マスコミ〟の存在だ」と現地の新聞記者が明かす。宮城県では3月31日には過去最多を更新する200人の感染が確認されたが、「潜伏期間や陽性確認までの時間を考えると、感染したのは2週間ほど前と推察される。3月11日の東日本大震災10年に向けて県外、特に東京の報道陣が多く被災地を訪れており、その影響を指摘する声が大きい」のだという。「報道陣だけでなく、命日に故郷を訪れる親族も多く、人の流れが活発になった事は間違いない。ただ、岩手や福島ではそこまで増えておらず、影響は分からない」と同県の医療関係者は首をかしげる。

 一方、ネット上で囁かれた「もう1つのマスコミの影響」が、震災10年に合わせて3月7日に宮城県南三陸町で行われた「NHKのど自慢」だという。「県内の医療関係者」からの情報として、「のど自慢に参加する人達がカラオケで練習をして集団感染した事例が複数あった」という内容がSNSで拡散されたのだ。

 ネットではマスコミが〝マスゴミ〟と言われるように、格好の叩かれる対象となる。特に餌食になりやすいのがNHKや朝日新聞だ。「元は医師の間で共有された情報のようだが、それがネットで拡散され、感染拡大の要因はNHKであると広まってしまった。そうした感染事例があったのは事実かもしれないが、全てではない」と現地の医療関係者は複雑な表情を浮かべる。

 長引くコロナ禍に鬱屈する人が多いのは仕方がないが、ウイルスだけでなく、不確定な情報も広げないよう心掛けたい。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top