東京女子医大の医師2人が起訴
裁判の行方は?
手術後の2歳男児に鎮静剤「プロポフォール」を大量投与して死亡させたとして、東京地検は1月、業務上過失致死罪で、東京女子医大の中央集中治療室で治療を担当していた麻酔科医2人を在宅起訴した。警視庁が「厳重処分」を求める意見付きで麻酔科医6人を書類送検してから3カ月。検察の判断はなぜ分かれたのか。そして、在宅起訴された2人はこの先どうなるのか。
起訴状等によると、2人は2014年2月18〜21日、首の腫瘍の手術を受け人工呼吸器を付けた男児にプロポフォールを投与。副作用の可能性がある心電図の異常等が起きていたのに約70時間にわたって投与を続け、急性循環不全で死亡させたとしている。
起訴された2人は、同病院中央集中治療部の副運営部長だった小谷透医師(61歳)と研修医だった福田聡史医師(39歳)。小谷医師は人工呼吸器を使っている集中治療中の小児への使用が禁忌とされているプロポフォールの投与を決定したり、福田医師らを指導したりする立場にあった。福田医師は、男児に投与されたプロポフォールの3分の1の投与を決定したという。
「過失への関与がより大きいとされた2人が起訴され、残る4人の麻酔科医は起訴猶予(不起訴)となった」(全国紙記者)。2人は今後、被告として出廷し、判決を受ける事になる。「男児の家族は2被告らを相手取り民事裁判を起こしており、6月には判決が出る予定。取材に対し、6人全員が起訴されてほしかったとしながらも、2人に法廷で真実を語ってほしいと願っていた」(同)。
刑事裁判の1審は被告人が出廷するため、本人の言葉を聞く事は出来るが、「チーム医療が基本の大学病院では役割分担や責任が曖昧な部分も多く、真実に迫る証言が出るかは分からない。2人しか起訴されなかった事で、不起訴になった医師らに責任を押し付ける可能性もある」と司法関係者。裁判で治療の実態が明らかになるかどうかは不透明だ。
教師もシッターも……
次は医師にも? 「わいせつ」処分
子どもへのわいせつ事件に厳しい目が注がれている。文部科学省は児童、生徒へのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員が、教員免許を再取得出来ないようにする法改正を検討している。また、厚生労働省は子どもへのわいせつ事件で有罪になり、刑期を終えたベビーシッターの氏名をインターネットで検索出来る制度を始めると決めた。
こうした流れを受けて、患者に対するわいせつ事件を起こした医師にも厳罰化を望む声が出ている。「刑事事件で有罪になった医師は厚労省の審議会に諮られ、そこで業務停止等の行政処分を受ける。ただ、免許取消は少なく、再取得も可能。患者が成人であっても、医師と患者という立場の違いを利用して犯罪を行う卑劣さは、教師やシッターと変わらない」とこの問題に詳しいジャーナリストは語る。
一方で、「治療上、異性の患者の体に触れざるを得ない事も多い。精神科では、患者の精神状態が不安定で立件が難しく、逆に冤罪が生まれる危険もある」(内科医)との声も。議論の余地がありそうだ。
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