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未来の会

自費PCR検査の自律的な活用と高齢者の宿泊保養システムの導入

自費PCR検査の自律的な活用と高齢者の宿泊保養システムの導入
1.自費PCR検査の自律的な活用

 1月8日(金)、1都3県で緊急事態宣言が出された。この宣言は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(「特措法」と略称されている。)第32条第1項に基づく。開始初日の全国の新型コロナ感染者数は過去最多の7882人、死亡78人、重症者826人とのことであった。感染も拡大し、これからはPCR検査の需要がさらに高まるであろうから、「それに応じてPCR検査が飛躍的に拡大されていくであろう。」と思われたが、実はさほどではないらしい。前日の7日の菅首相記者会見では、「検査が必要であれば」という留保付きであったので、必ずしも今以上に飛躍的にPCR検査を増加させるわけではないようである。

 しかし、それはそれでやむを得ないように思う。感染症法第15条に定める積極的疫学調査の一環としての行政検査(としてのPCR検査)なのであるから、保健所などの予算・人員などの縛りがあるのは当然であり、その限界の結果、必要性・効率性によって絞られざるを得ない。

 そうしてみると、これからは質的にはともかく、少なくとも量的には自費のPCR検査が主力とならざるを得ないであろう。しかし、翻ってみると、その方が市民社会の多種多様な需要に即応できて良いのかも知れない。行政検査に頼っていても、それらの多彩な需要には応えてくれないであろうし、現に、応えることはできないであろう。この点、自費PCR検査ならば、多種多様な需要に応じて自律的に活用可能なのである。特に必要な分野は、先ず、事業活動であろう。事業所(会社や各種施設など)の需要に応じて、事業主負担で従業員・職員やお客さん・取引先に対して自費PCR検査を行えばよいのである。そして、それが健診に準ずるような性格のものであれば、その時には健保組合や都道府県・市町村による費用補助があってもしかるべきであろう。

 いずれにしても、事業主や市民個々人が自らの多彩な必要に応じて、自律的に自費PCR検査を活用すればよい。そうすると、結果として、感染の拡大に応じてPCR検査が飛躍的に拡大していくであろう。たとえば、特措法第4条第1項には、「事業者及び国民は、新型インフルエンザ等の予防に努めるとともに、新型インフルエンザ等対策に協力するよう努めなければならない。」と定めてある。そこで、この自費PCR検査の自律的な活用を促すべく、「自主的に」「自らの自律と負担において」「自発的に」とか「積極的に」というような文言を補充してはどうであろうか。その上で、「事業者及び国民は、自主的に新型インフルエンザ等の予防に努めるとともに、自らの自律と負担において検査や治療を自発的に受けるなどして、新型インフルエンザ等対策に積極的に協力するよう努めなければならない。」などと改正するのが良い。

2.高齢者の宿泊保養システムの導入

 今回の緊急事態宣言において特に注目されるのが、学校の一斉休校は無い、ということであろう。保育園や小・中学校などは、原則として平常通りということである。新型コロナは、子ども自身には余り悪影響が無いようであるから、登園・登校ができて、それはそれで良いことであろう。しかし、ここで考えなければならないことは、家庭内感染である。子ども自身は大丈夫であったとしても、実は、無症状病原体保有者になりかねない。そうすると、家庭内に高齢者や基礎疾患を有する者が同居している場合には不安が生じよう。現に、今は施設内感染以上に多いのが家庭内感染である。病院内ですら院内感染が起きるのだから、家庭内感染を防ぐことは甚だ困難だと言ってよい。そうすると、一時的なことだから我慢して、家庭内を区分・分離することもやむを得ないことであろうか。子どもと若い親、それと、高齢者たる祖父母と基礎疾患を有する者とに、家庭を一時的に区分・分離する手立てもあってもよいように思う。

 極端に言えば、家庭内感染とそれによる重症化を予防するために、たとえば、一時的に祖父母が保養地か湯治に出掛けるみたいな感じの手立てである。新型コロナからの疎開や避難というイメージにもとれて、あまり感じの良いものではないが、一つのありうる選択可能な手段のようにも思う。新型コロナから離れ、体を休ませて健康を養うというイメージであるから、「保養」という言葉が適するであろうか。感染状況が酷くなっている期間は、旅館・ホテルなどの場所に家庭から離れて逗留するのであるから、宿泊療養をもじって「宿泊保養」とも言えよう。

 当然、自費での自律的な宿泊保養ではあるが、そこそこの期間だと費用もかさむので、割引制度を施策として導入することが適切である。大きなホテルグループが大胆な自社割引キャンペーンを行うとか、国土交通省がGoToキャンペーンのように公費を投入するなどの方便も考えられる。

 ただ、宿泊保養を実施するに当たって、特に留意しなければならないことがある。それは、宿泊保養に移動する高齢者が地方などに新型コロナを蔓延させないようにすることにほかならない。このことを徹底させるため、宿泊保養には少なくとも事前のPCR検査をパッケージとしなければならないであろう。もちろん、30%にものぼる偽陰性に対しても慎重に対処すべきであるから、中長期の宿泊保養中には、追加のPCR検査もすべきである。なお、細かいことではあるが、主に高齢者が対象になるので、割引などの方便の手続きの主力はネットではなく、紙や印鑑ベースのアナログの方が適しているのかもしれない。

3.特措法の改正の仕方

 特措法の改正というと、往々にして、規制・強制・罰金などといった規制強化の方向ばかりに流されてしまいがちである。現に、改正が議論され、提案されている内容は、それこそ強制的な休業命令や公表措置、強制的な入院措置や罰則などといった強制的な公権力の行使の手法ばかりと言ってよい。しかし、新型コロナ対策の行政手法の本質は、規制行政ではなく給付行政であろう。多種多様な給付内容をアイデアとして考え出して、投入することが相応しい。そして、その給付の仕方も、直接的な現物給付の方法(たとえば、行政検査としてのPCR検査や宿泊療養)だけでなく、間接的な現金給付の方法(たとえば、自費PCR検査や宿泊保養への補助金給付)も活用すべきである。

 今後は、給付行政と間接的な現金給付を重視していくため、「新型インフルエンザ等緊急事態に対処するための国の財政上の措置」を定めた特措法第70条を改正して、少し補充を加えるべきであろう。現行法は、「国は、前条に定めるもののほか、予防接種の実施その他新型インフルエンザ等緊急事態に対処するために地方公共団体が支弁する費用に対し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。」とあるが、「予防接種の実施」だけでなく、「予防接種、PCR検査、及び宿泊を伴う保養の実施」と補充し、「地方公共団体が支弁する費用に対し」だけでなく「地方公共団体、事業者及び国民が支弁する費用に対し」と補充するのが良い。つまり、「国は、前条に定めるもののほか、予防接種、PCR検査、及び宿泊を伴う保養の実施その他新型インフルエンザ等緊急事態に対処するために地方公共団体、事業者及び国民が支弁する費用に対し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。」と改めるのが適切かと思われる。

4.最後に−緊急事態宣言の解除後

 緊急事態宣言は、今まさに必要な措置であろう。しかし、より一層に大切なものは、緊急事態宣言の解除後の措置である。緊急事態宣言だけでは事は解決しない。今後は、諸々の適切なアイデアを生み出して、非権力的な給付を充実させていくべきだと思う。自費PCR検査や宿泊保養への補助金給付はその参考の一例にすぎないのである。

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