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第130回 ゾフルーザ:予防にも無効 

第130回 ゾフルーザ:予防にも無効 

 抗インフルエンザウイルス剤ゾフルーザ(一般名バロキサビル)は、タミフル(一般名オセルタミビル)と同様有用ではなく、抗体産生を抑制すること(106回)、重大な出血の害があること(111回)、肺炎や多臓器不全、突然死の害もあること(117回)を指摘した。ゾフルーザをインフルエンザ予防に用いた臨床試験結果を、薬のチェック92号1)で扱ったのでその概略を紹介する。

ランダム化比較試験では有効との報告があるが

 7月に公表されたゾフルーザのランダム化比較試験(RCT)では、インフルエンザに感染した患者の家族749人(プラセボ群375人、ゾフルーザ群374人)に用いた結果が比較された。

 PCR検査陽性で発熱と中等度以上のインフルエンザ症状のある例を主エンドポイントとすると、プラセボ群51人(13.6%)に対して、ゾフルーザ群は7人(1.9%)と少なく、リスク比0.14で予防に有効であったと報告された。

服用翌日のウイルス陰性は「偽陰性」

 しかし、治療の臨床試験結果では、ゾフルーザを服用した翌日にはPCR法で、ほぼ検出限界以下となったが、この時点ではまだ90%の人にインフルエンザ症状が残っていた。これは、体内にウイルスは存在しても、ゾフルーザがPCR検査でのウイルスRNAの増幅を阻害した結果、偽陰性になったことを示唆する。予防にゾフルーザを用いてもウイルス偽陰性のインフルエンザ患者がいるはずである。

タミフルでも検査陰性のインフルエンザ多数

 タミフルの予防RCTでも、検査陽性の症状完全インフルエンザ例は、タミフル群で顕著に抑えられた(8.5%対1.3%)。しかし、検査陽性でも症状不完全例(5.2%対1.9%)や無症状例(5.2%対3.9%)では有意差はなかった。一方、検査陰性でも何らかのインフルエンザ様症状があった例は、プラセボ群9.8%に対してタミフル群の方が18.7%と有意に多かった(p=0.003)。脱落例も含め不都合例の合計は、プラセボ群28.8%、タミフル群27.2%と全く差がなく、予防には無効であった。

ゾフルーザ:検査陰性のインフルエンザ報告なし

 タミフルの試験と同様の集計を試みると、検査陽性症状完全インフルエンザ例は、プラセボ群22.9%に対してゾフルーザは6.1%と有意に減少していた。症状不完全例(5.3%対5.9%)や無症状例(3.5%対3.7%)は検査陽性例で有意差はなかった。しかし、検査陰性でインフルエンザ様症状があった人数が全く報告されていないので真の予防効果は不明である。

耐性化が高率、出血・重症化も

 ゾフルーザ群でPCR陽性となった49人中31%に耐性変異が検出された。2018〜19年冬に多用され、耐性化率が73%になった。ゾフルーザ耐性化ウイルスが治りにくいのも、タミフルとは異なる。 

 顕微鏡的血尿がゾフルーザ群に多く認められた(p=0.057)。出血はゾフルーザの特徴的な害なので因果関係があろう。予防目的で多数が使うようになれば、多臓器不全や突然死もありうる。大変危険だ。

実地臨床では

 ゾフルーザの予防効果の証拠はないが害はある。予防目的でも絶対に使わないように。

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