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スイスの医療

スイスの医療
スイスという国

 スイスは、ヨーロッパにある連邦共和制国家で永世中立国である。ただし、国民皆兵を国是としており、徴兵制度を採用している。20〜30歳の男性には兵役の義務があるが、女性は任意である。スイス国軍は約4,000人の職業軍人と約21万人の予備役から構成されている。

 主要な一般道路には戦車の侵入を阻止するための障害物やトーチカが常設されている。東西冷戦の名残で、2012年までは、家を建てる際には防空壕(核シェルター)の設置が義務付けられていた。

 スイス連邦には26のカントン(canton)と呼ばれる州が存在する。そのうち6つは準州と呼ばれ、全州議会の議員定数配分が通常の州の2人に対し、1人だけとなっている。カントンは、全部で2,889の市町村に分かれている。

 ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つを公用語としている。聞きなれないのが、第4の国語といわれるロマンシュ語で、南東部で6万人ほどに使われている。ロマンシュ語は、アルプスの先住民レチア人の言語がローマ帝国の征服によってラテン語化されて生まれたという。 

 人口は、移民のために増加中で800万人を超えている、外国人の定住者ないし短期労働者は全人口の2割に及ぶ。

スイスの経済力

 国際通貨基金(IMF)によると、2013年のスイスの国内総生産(GDP)は6,887億ドルで、世界第20位である。同年の1人当たりのGDPは85,762ドルで、世界でもトップクラスの水準である。

 BCG Global Wealth 2012によれば、富裕層も非常に多く、9.5%の世帯が金融資産で100万ドル以上を保有しているとされる。これは、時計や製薬、金融といった、革新性が高く付加価値が高い産業に強みを持つためといわれる。

 実際、2014年5月18日、最低賃金を時給22スイスフラン(約2,500円)とする案が国民投票で否決された。もっとも、スイスの労働者の約9割は既に時給22スイスフラン以上の賃金を得ているとされる(14年5月19日付、ジュネーブ=共同)。

 なお、同時期におけるフランスの最低賃金は9.4ユーロ(約1,300円)、英国は6.3ポンド(約1,080円)、東京は869円である。

 食事代も、日本人としては費用対効果が悪いというか、高価であった。例えば、日本では高級ホテルではあり得るかもしれないが、街の通常の店において写真のようなハンバーガーが日本円で約3,000円であった。イメージとしては日本の2〜3倍であろうか。

 一方で、税金はどうかといえば、個人所得税は連邦及び州・地方自治体で課税され、共に世帯単位課税となっている。連邦税は累進課税で、既婚同居夫婦及び単親世帯には優遇税率が適用される。連邦税、州・自治体税共に保険料や企業年金、利息といった一般的な控除に加え、住居の修繕・維持費、子女の教育費等も控除の対象になる。

 連邦税の最高税率は11.5%。州・地方自治体の課税方式は州・自治体ごとに異なる。例えば、20万スイスフラン(約2,270万円)の所得がある、州都に住む既婚で子どものいない人の所得税(州税、自治体税、宗教税の合算)の税率は、最も低いのがスイスの中央部にあるツーク州の10.04%、最も高いのは西部にあるヌーシャテル州の23.71%で、州や町として税収を増やすために税率を引き下げるという戦略をとっている。

 連邦税務局のサイトで、州・地方自治体ごとの税率統計を公開している。付加価値税は標準税率が7.7%。軽減税率(食料品、医薬品、書籍、新聞等):2.5%、宿泊:3.7%、医療機関での治療行為・保険・銀行サービス等は非課税である。

 街ごとに特徴がある。小さな街のバーゼルにも、オランダの有名な哲学者エラスムスの墓があったり、市立の美術館にゴッホやモネ、ルノアールなどの有名絵画が常設されていたりする。やはり、歴史に基づく豊かさもあるのである。

スイスの医療提供体制

 スイスでは2012年1月に病院の支払いシステムが改正された。つまり、米国のDRG/PPS(診断群別定額支払方式)のように入院日数は考慮せず、基礎保険適用の医療行為を包括払いとした。

 年齢や性別により全国同一に疾病分類 (SwissDRG)とし、全医療行為の平均医療費を「1」とし、該当疾病グループのコストを患者の年齢・性
・治療内容・診断群等で判断した係数で示し、平均医療費にこの係数を掛けたものを医療報酬タリフとした。

 2015年の時点でスイス全体では293病院(3分の2が公立、3分の1が民間)、38,000床がある。なお、ジュネーブ大学病院は1,800床である。

 さらに、26カントンごとに基礎保険適用の医療行為を行える病院を新たに選定したり、各病院に全ての患者の受け入れを義務付けたりしている。個人は基礎保険適用医療行為において居住地の州に限らず他州の病院リストに登録された病院でも治療を受けられるようになった。

 ただし、居住地の病院より医療費が高い場合、差額は個人負担となる。救急時は従来通り全国どこでも、どの病院でも医療サービスを受けられる。スイス保健省は国内の病院の品質指標を公示している。

スイスでの遠隔診療

 スイスでは、MedgateとMedi24という大手の遠隔医療会社がある。2000年以来、Medgateは医師による運営のヨーロッパ最大の遠隔医療センターである。

 従業員は300人で、ヨーロッパの5カ国に展開している。ヘッドオフィスはバーゼルで、今回2店舗目としてMini Clinicを2018年の夏にオープンした。ここは直営であるが、パートナーであるクリニックはスイス全土にいくつかある。

 Mini ClinicはMedgateというスイスの会社が、薬局内で行っているクリニックのサービスであるが、このクリニックには医師はいない。

 患者が来院すると、ナースあるいは看護補助者が、患者に直接対応する。医師は、本社に常駐しており、患者とは画面で対応し、聴診器や耳鏡などを遠隔で画像を見ながら対応する。のどの奥もスマホをカメラ代わりにして遠隔画像として診断が可能である。

 ここでの検査は、血圧・心電図・酸素飽和度・スパイロメーター・血液や生化学の測定が可能で、レントゲンの設備はない。処方も可能である。朝の8時から夜の8時まで予約無しで対応し、かかりつけ医がやっていない時間帯もカバーしている点に特徴がある。責任は薬局が負うという。また、保険診療になっている。

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