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岡山県に「猛抗議」HPVワクチン訴訟の泥沼

岡山県に「猛抗議」HPVワクチン訴訟の泥沼
岡山県に「猛抗議」
HPVワクチン訴訟の泥沼

 子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の積極的な接種勧奨が休止されて6年。無料で受けられる定期接種の対象でありながら多くの対象者が知らないままという現状に、自ら情報発信に動く自治体も出始めた。

 その1つである岡山県が作成した独自のリーフレットに、HPVワクチン薬害訴訟弁護団が抗議を申し入れる騒動が起きた。

 岡山県は今年度、子宮頸がんやHPVワクチンについて正しい知識を啓発するために予算を計上。また8月に、4ページからなるリーフレットを作成した。「娘さんを持つ保護者の方へ」と題するリーフレットは、県のホームページからも閲覧できる。

 伊原木隆太知事も「予防できる子宮頸がんに対して、『できることはしっかりと行い、救える命を 1人でも多く救っていきたい』との強い思いを持っています」とメッセージを寄せ、ワクチンの有効性や接種後に気になる症状が出た場合の相談先などを丁寧に解説している。

 ところがこのリーフレットを巡り、国や製薬企業相手に訴訟を起こしているHPVワクチン薬害訴訟弁護団が申し入れを行ったのである。

 「弁護団は、ワクチンにより重い副反応が生じる危険性を十分に伝えていないなど不適切な内容が多いとして、知事宛にリーフレットの使用や配布の中止を求める申し入れ書を出し会見した。これが地元ニュースで報じられると、岡山県の動きを歓迎していた産婦人科医らから落胆の声が上がった」(全国紙記者)。

 一方で、「ニュースを見て気になってリーフレットに目を通したが、よくまとまっている内容だと感心した」(県民)との声も。日本産科婦人科学会もこうした自治体の動きを強く支持するとの声明を出した。積極的勧奨中止により接種率がわずか1%となる中、県民の健康を守る地方自治体の独自の取り組みが潰えないことを、多くの医療関係者は固唾を呑んで見守っている。

東京高裁でも敗訴
HPV名誉毀損訴訟の示す「科学無視」

 そのHPVワクチンを巡るもう1つの訴訟が10月末、東京高裁で判決を迎えた。医師でジャーナリストの村中璃子氏が雑誌『Wedge』に執筆した「子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造」と題する記事によって名誉を傷つけられたとして、厚生労働省研究班の主任研究者、池田修一・信州大学元教授が起こした民事裁判だ。

 一審の東京地裁では村中氏側が敗訴、雑誌の発行元の出版社と元編集長は判決を受け入れたが、村中氏は控訴し、舞台は東京高裁に移った。だが、高裁も池田氏の研究を「捏造」とした村中氏の記事について名誉毀損を認めたのである。

 「村中氏は判決を受けて『多くの人の命に関わる誤った発表を行った一個人の名誉を、その発表の不備を科学的に指摘する記事の公共性・公益性よりも重いと判断するのか』と反発したが、名誉毀損裁判というのはそういうもの。争点は『捏造』という言葉が適切だったかに終始した」と全国紙の司法担当記者は話す。

 一方、同紙の医療担当記者は「村中氏の勇気ある記事によって、これまで副反応を訴える被害者一辺倒だった報道も潮目が変わり、科学的な批判に一切答えない池田氏の評価は落ちた。記事が世の中に与えた影響は判決によって揺らぐものではない」と評価する。

 村中氏は最高裁に上告する姿勢を示している。

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