5G(第5世代移動通信システム)革命は夢のような近未来として語られる一方で、IoT(モノのインターネット)で家電などがインターネットに接続することにより、便利さと同時に大量のデータを盗まれる危険性も抱え込むことになる。また、5Gの覇権を握るため米中デジタル冷戦が激化しているが、超国家企業がその行方に大きな影響力を持っているという。ITビジネスアナリストの深田萌絵氏に話を聞いた。
——5Gにはどのような特徴がありますか。
深田 5Gの特徴として挙げられているのが、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という3つです。通信速度は、アップロードで10ギガビット/秒、ダウンロードで20ギガビット/秒が可能になります。まさに超高速です。そして、情報を超低遅延で、つまりリアルタイムで送ることが可能になります。さらに、多数同時接続が可能になることで、パソコンやスマートフォンだけでなく、家電など身の回りの機器がインターネットに接続されるようになるでしょう。
——それによって、夢のような近未来社会が到来するともいわれていますね。
深田 車の自動運転が可能になり、目的地を伝えるだけで車が勝手に目的地まで送り届けてくれ、リアルタイムで更新される地図機能のおかげで渋滞知らず、といった未来ですね。仮想空間に作られた会議室にリアルタイムで何人もの姿を合成して映し出せば、あたかも直接会って話しているような会議が可能になるので、通勤の必要もなくなるかもしれません。建築現場もほとんどは遠隔操作による作業になりますし、危険な作業も無人重機を派遣して、遠く離れた安全な場所から操作することになるかもしれません。5G時代には、そうしたことが可能になるともいわれています。
——5Gの技術はもう完成しているのですか。
深田 通信技術としては一応完成しているのですが、現在の段階では、前述で語られているような夢の未来はまだまだ先の可能性が高いですね。4Gの時も、始まったときは4Gのスペックを満たしていなかったため、3・9GとかLTE(Long Term Evolution)などと呼ばれていました。それを騙し騙し使っていき、ようやく4Gと呼べるものになったわけです。今回の場合、無線空間の1ミリ秒は達成されているし、10ギガバイト/秒や20ギガバイト/秒も達成されているので、技術的には5Gと名乗ることはできます。ただ、トータルの遅延が4Gよりも少し遅くなるリスクは残っていて、どこまで低遅延が実現できるかは分かりません。
——医療にはどのように活用できるのでしょう?
深田 遠隔医療の未来が大きく開けていくと思います。中国では遠隔手術なども視野に入れていますが、まだ通信以外の課題も残されています。ハプティクスと言いますが、例えばメスで組織を切った時の感触が伝えられないのです。リアルタイムで手術部位を写し出したり、メスを操作したりすることはできるので、感触を伝えることができれば、実際に患者さんを手術するように遠隔で手術することが可能になるわけです。
——5G時代の到来で懸念されることは?
深田 現在もある課題ですが、セキュリティの問題が全く解決されていません。例えば、現在でも日本のデータを中国が収集していて、合法非合法の形でかなり解析されているという現実があります。昨年、ある中国人のところに伺った時、その人が安倍首相を接待する役割を任されたと誇らしげに話していたのですが、食事を決めるために安倍首相のカルテを集めたと言っていました。体調や食べられない食品などを調べ、これで接待の食事は完璧だと胸を張っているわけです。中国は日本のデータをせっせと収集し、管理しています。スマートフォンのGPSデータやいろいろなアプリのデータなど、盗み放題なのでしょう。
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