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未来の会

第131回 令和の政治、野党の「本分」とは何か

第131回 令和の政治、野党の「本分」とは何か

 皇位継承を内外に示す「即位の礼」を控え、列島は再び奉祝の季節を迎えた。ラグビーワールドカップの熱狂が続く中、各国から賓客が日本を訪れる。

 政界では、消費増税後初の国政選挙となる参院埼玉選挙区補選(10月27日)に関心が集まっている。8月の埼玉県知事選に続き、野党が勝利しそうな情勢だが、与党側は「局地的な出来事」と受け流す気配だ。与党幹部らが気にしているのは、むしろ、次期衆院選に向け、共産党が旗振りを始めた「連合政権構想」の行方だというが……。

次期連立政権は〝非自民・含共産型〟?

 共産党の志位和夫・委員長は8月末、「野党連合政権にむけた話し合いの開始をよびかけます」と題した文書を立憲民主党、国民民主党、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」、れいわ新選組などに送った。次期衆院選に向けて、政権構想を協議する党首会談の開催を提案したのだ。

 文書は、2015年の安保法制反対を契機に始まった野党共闘が、今年夏の参院選での統一候補の躍進などで一定の成果を挙げていると評価。その上で、「政権問題での前向きの合意をつくること」が野党共闘の解決すべき課題だとし、次期衆院選で「野党が勝利を収めるためには政権構想の合意は避けて通ることはできない。意思さえあれば、野党連合政権への道を開くことは可能だ」と結論付けている。

 〝多弱野党〟の現状を分析し、進むべき道を論理的に説いた、共産党らしい中身で、特別際だったものでもない。自民党の中堅議員は「まあ、志位さんなら、そう言うだろうな」と、馬耳東風を決め込んでいたが、記者会見での志位委員長の発言に「ん、いつもとちょっと違うな」と首をひねった。

 志位委員長が「(政策の)違いは尊重し、一致点で協力する立場だ」と強調したからだ。

 「政策の違いを尊重して政権合意などできるのか。一致点で協力するというのは、部分連合ということなのか。原理主義で筋をぎりぎり通す共産党のスタイルとは何かが違う。誰かの入れ知恵なのか。ともかく、話し合いのテーブルに皆を着けるためハードルを低くしたということなんだろうか」

 自民党の中堅議員が抱いた違和感について、自民党幹部はこんな解説をしている。

 「2009年の民主党政権は民主党、社民党、国民新党の連立で、非自民・非共産政権だった。1990年代の細川護熙政権などと同じで、共産党はオミットされた。今回のは『今度は仲間外れは御免被る』という意思表示だろうな。政権ができていないのだから、〝捕らぬ狸の皮算用〟なのだが、先手を打って、もし、野党連合政権ができた暁には、共産党も必ず参加するという担保を取ろうとしたんじゃないか」

 民主党政権発足時、共産党内には野党連立政権への参加構想も一部で持ち上がっていた。ただ、この時は未成熟であり、民主党内の共産アレルギーもあって現実化しなかった。

 その後、共産党は野党連立政権が誕生した際には、閣僚を出し、政権の一翼を担うという方向に急傾斜していく。2016年には「野党連合政権」の樹立構想を打ち出し、当時の民進党の蓮舫代表から「片思い」などと袖にされている。今回の構想もその延長戦にあるのだが、自民党幹部は従前とは異なる匂いも感じるという。

 「小さい政党が連携する合従策は自然の成り行きだ。そうしなければ政権は未来永劫できないからだ。ただし、異なる政党をくっつけるには、触媒とかシンボルとかが必要になる。ところが、野党筆頭も2番手も、未だに国民にアレルギーのある〝民主党〟の名前が付いている。分裂したり、くっついたり、お家の事情でまとまりのない集団だという負のイメージが払拭できていないんだな。そこで、目先を変えて、共産党が触媒になる。かなり、トリッキーだが、もし、共産党が党名変更したらどうだ。衆院選の直前に共産党が長い歴史にピリオドを打ち、未来のために生まれ変わったと有権者にアピールするとしたら……。そんなことを裏で考えている奴がいるんじゃないかと、勘ぐりたくなるね」

 共産党の党名変更は妄想半分としても、民主党政権への国民のアレルギーはかなり根強いと思っていい。立憲民主党と国民民主党が衆参両院で統一会派を組んだことに関し、多くのメディアが次期衆院選での旧勢力の再集結を念頭に「『またしても』というか『やっぱり』というか」と突き放した報道で応じたのもその一例だろう。

 立憲民主党の枝野幸男代表が独立路線にこだわり、統一会派結成が決まってなお、「統一会派といっても政党は異なる」と発信し続けているのも、こうした事情を読み取ってのことだ。立憲民主党の若手衆院議員が語る。

 「旧民進党は安全保障政策や原発政策で党内に両論があり、党内不一致による内紛が頻発した。分裂後はそれぞれが自分達の政策の純化を図り、それが国民から一定の支持を得てきた。衆院選前に、また合流となれば、これまでの努力は無駄になる。与党はまたぞろ〝同じ過ちを繰り返す奴らを信用してはいけない〟と批判するに決まっている。前回衆院選は小池百合子・東京都知事の失言で立憲に同情票が集中したが、次回も風が吹くとは限らない」

有権者の判断基準は政権担当能力

 随分と弱気なのだが、野党議員の先々への不安は隠しようがないのだろう。かと言って、現状のままでは、じり貧なのは明らかだ。国民民主党のベテラン議員が興味深いことを言っている。

 「自民党1党支配といわれた昭和の時代は、野党は批判勢力で良かった。自民党は右から左まで幅広い政治理念があり、政策も多様で、包括的な政党だったからだ。自民党は野党の批判に耳を傾け、野党を立てる形で国会の合意形成を図った。しかし、右派支配の安倍晋三政権は、表向きは野党の主張を無視し、裏では野党の主張を自分達の政策にすり替えて、自らの手柄にしてしまう。幼児教育・保育の無償化がまさにそれだ。批判野党では安倍政権の思うつぼだ。有権者もその辺は分かっているが、政権担当を期待できない野党では投票先に選べない。令和の時代は、政権担当能力を示すことこそが野党の本分なんだ」

 「頭数の多さ」だけで政権担当能力が示せるとは思わないが、ある程度のボリュームを持った野党でなければ有権者の関心を誘えないのは事実だろう。

 問題は政策パッケージの中身だ。衆院選が近づく段階で、安保政策や原発政策で内紛をさらすようでは、もはや国民に受け入れられない。政権取りに向けた野党間の議論を早期に始め、じっくりと練り上げ、機を見て立つという心構えが肝要だろう。

 共産党がその“行司役”になるのなら、案外面白いかもしれない。

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