地域医療とまちづくりを共に担う
192 志村大宮病院(茨城県常陸大宮市)
茨城県北西部に位置し、久慈川や那珂川の鮎釣り、星空観察スポットなどで知られる茨城県常陸大宮市。志村大宮病院は市内唯一の病院として1951年に開院した。しかし、99年に公的急性期病院誘致運動が起きたことで機能分化を迫られる中、鈴木邦彦理事長はかかりつけ機能を中心としたリハビリテーションと介護に特化することを決断した。
鈴木理事長はリハビリを充実させるには創設間もない回復期リハビリ病棟が必要と考えたが、当時、セラピストは理学療法士が院内に1人しかいない上、同県は人口当たりのリハビリ専門職数が全国最下位。しかも回復期リハビリ病棟は県都・水戸市の病院にもなく、郡部にある同病院での開設は不可能と言われた。しかし、危機感を持った幹部・職員の取り組みにより、2003年に県内で4番目、県央・県北西部では初の回復期リハビリ病棟「スイス館」(50床)の開設に漕ぎ着けた。また、同市周辺に住む患者を退院後もフォローするため、リハビリ機能強化型デイサービスの拠点なども各地に作っていき、「地域医療構想や地域包括ケアを先取りする形になった」と鈴木理事長。
その後、鈴木理事長は中央社会保険医療協議会委員、日本医師会常任理事を務める中、地域の看護師不足の改善のため10年に茨城北西看護専門学校を設立。翌年の東日本大震災で同病院は被災したが、老朽化していたこともあり本館を建て直すことにし、15年に新本館「ドイツ館」(60床)が完成、県内7番目の緩和ケア「エーデルワイス病棟」(20床)も開設した。また、仮病棟として使っていた建物を改装し、元気な高齢者も利用できるアクティビティセンターを開設したり、敷地内にサービス付き高齢者向け住宅やリハビリ公園を整備したりした。
現在、医療法人博仁会、社会福祉法人博友会、学校法人志村学園、有限会社いばらき総合介護サービスで「志村フロイデグループ」(SFG、鈴木邦彦代表)を構成、職員数は1100人以上に上る。同市の人口が減少している中、「中小病院は地域と運命共同体」(鈴木理事長)との考えから、SFGではまちづくりに取り組んでいる。職員有志によるボランティア組織が空き店舗を活用してカフェを運営、そこを拠点にネットワークを構築し、宿題教室や子ども食堂、高齢者向け健康カフェ、朝市など様々なイベントを開いている。
192_志村大宮病院
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