機構の組織再編、医師偏在に関する厚労省との共同対応を求める
紆余曲折を経て2018年4月にスタートした新専門医制度。既に1年以上たつが、病院界からは問題点の指摘が収まらない。
日本病院会(日病)の相澤孝夫会長は5月25日の記者会見で、「専門医制度への要望」を公表した。提出先は日本医師会、日本医学会連合、日本専門医機構、厚生労働省だ。
日病は昨年12月から今年1月まで、役員が所属する病院を対象に「専門医制度に関するアンケ−ト」を実施。その結果、新専門医制度スタート後、調査対象病院である地域の基幹病院で専攻医が激減する一方、大学病院での研修が増加していることが分かった。「質を追求するあまり、専門医養成施設の基準が高くなり、医師偏在が助長されている」という現場の声を裏付けるデータとなった。
このような状況を踏まえ、報告書は①第三者性を担保するための組織、財務体制の強化②日本専門医機構の組織構成の強化③「専門医」の位置付けの明確化④地域偏在、診療科偏在への適切な対応——を求めている。
具体的には①では、機構の各構成団体は組織の強化、確立を全面的に協力支援するとともに、軌道に乗るまで、財政的支援に一定のルールを設け、将来的には公益財団を目指すべきと主張した。
②では、病院団体の意見が十分反映されていないため、現在2人となっている副理事長を3人として、病院団体の代表を1人加えるように要望した。
③については、14年に発足した機構が当初の目的とかけ離れ、医療現場に混乱を生じさせていることに憂慮し、四病院団体協議会(四病協:日病、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)が18年8月に発表した「専門医制度への提言」に基づき、機構の真摯な改善を求めた。
四病協の提言では(1)初期臨床研修修了後3年程度の研修(専門研修制度)を修了した医師は「(認定)専門研修修了医師:certified doctor」とすべき(2)science・art・coordinate能力を持つ「専門医:specialist」は十分な臨床経験の後に取得すべき(3)医師のキャリアパスに則り、重層的で多様性のある専門研修を確保すべき(4)専門研修を受けない医師に対し、所属先や病院団体、医師会は質の担保のための研修を提供すべき——としている。
④では、新専門医制度により、医師の地域偏在や診療科偏在が進んでいることに対し、機構は厚労省と共同で原因を究明し、適切な対応をとるように促した。
④に関連しては言えば、5月22日の四病協総合部会後の記者会見で、幹事団体である日病の相澤会長は、「地域医療構想の実現」「医師の働き方改革」「医師偏在の解消」を厚労省が“三位一体”で進めようとしていることに対し、地域医療構想の実現がままならない状態で3施策を同時に進めるのは現場の混乱を招き、反対であるとの四病協の立場を明らかにした。
相澤会長は、まず地域医療構想を実現して病院の機能分化・連携を進めた上で、機能などに合わせて医師を配置し、その体制の中で働き方改革の実現を目指すべきとの考えを示した。また、地域医療構想は「病棟単位」の機能分化を前提にしているが、本来は「病院単位」での機能分化を考えていくべきと指摘した。
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