元学生の編入先大学に「勉学に支障を来しかねない発言」
岩手医科大学(岩手県盛岡市)に対し、元学生の家族が寄付金の返還を求める訴訟を昨年9月、盛岡地方裁判所に起こしたが(弊誌2018年10月号で詳報)、今年5月8日に取り下げた。寄付金の支払い遅れの見せしめに当時医学部に在籍していた学生を留年させたのではないかという疑惑が生じたことで、寄付金の返還を求めるとともに、小川彰理事長の“金権体質”や医師国家試験の合格率の低さなど大学が陥っている危機的状況を明らかにしようとして訴訟が起こされた。
家族は訴訟取り下げの理由について、公表したコメントの中で「岩手医大の不正行為が全国に知れ渡るとともに、入試でも同大で不正行為があったことが明らかになった」と訴訟の当初の目的がほぼ達成できた点を挙げた。一方、「私の子供は岩手医大を退学し他大学に編入したが、訴訟を提起して以降、岩手医大が編入先大学に連絡し、子供の勉学に支障を来しかねない発言を複数回にわたり行ってきた」と岩手医大の〝嫌がらせ〟を暴露。子供が学業に専念できる環境を妨害されたくないためにも訴訟を取り下げたという。
取り下げの表明に対し、岩手医大は当初、訴訟報道などにより大学の名誉が傷付けられたなどと不同意の姿勢を取っていたが、結局、期日最終日に同意したという。編集部では岩手医大に取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。
岩手医大は文部科学省が不適正入試を認定した9大学のうちの1つ。18年度一般入試で不合格となった7人より評価が下位の受験生を追加合格させたり、編入学試験を巡っては募集要項に明記せずに岩手医大歯学部出身者を優遇したりしていた。岩手医大は不利益を被った計8人を追加合格とする方針だったが、応じた受験生は2人だけだった。
文科省は今年1月、岩手医大に対し、18年度の私学助成金を前年度比25%(約4億6000万円)減額すると発表した。附属病院の9月の移転開院を控えての措置だった。
岩手医大は「わが国で初めて医学・歯学・薬学・看護学の医療系4学部を同一キャンパスに備えた医療系総合大学」を売りにしているが、医学部では国家試験合格率が全国平均の89・0%に対し、下から2番目の74・1%。また、今年4月の入学者は、歯学部が総定員57人に対し53人(編入学3人を含む)と定員割れ。薬学部は総定員120人に対し48人と、定員比40%の不人気ぶりだ。
この大学のトップである小川理事長は5月23日、副会長だった一般社団法人日本私立医科大学協会(医大協)の会長に就いた。岩手医大からの会長就任は初めて。
小川理事長は1974年に岩手医大医学部を卒業。医学部長、学長を経て12年に理事長に就任。生粋の岩手医大プロバーだけに、関係者は「誰も意見が言えない独裁体制を敷いている」と言う。
同協会は29の私立医大や医学部のある私立大で組織している。小川理事長は地方大出身のリーダーとして地域医療の課題解決や医学部入試改革の推進が期待されているというが、自らの足下の大学がおぼつかない中で、会長の大役は適任なのだろうか。
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