3年目の歩みを報告し、支援を訴える
がんを経験した人や家族が看護師ら専門職に無料で相談できる英国発祥の民間施設「マギーズ東京」。東京・豊洲に2016年秋にオープンしてから約2年半たった今年3月、東京・上野の東京文化会館でチャリティーコンサート(協力:日本音楽財団)が開かれた。
数々の国際的な賞を獲得している米国人ヴァイオリニストのベンジャミン・ベイルマン氏と、米ニューヨークを拠点に国際的に活躍しているピアニストの江口玲氏の演奏とあって、会場となった同会館大ホール(2303席)はほぼ満席となった。マギーズセンターの生みの親、英国人の故マギー・ジェンクスさんの娘、リリー・ジェンクスさんも参加した。
演奏に先立ち、認定NPO法人マギーズ東京共同代表・センター長の秋山正子氏が講演を行い、これまでの活動について報告した。秋山氏はまず、マギーズセンターの始まりを説明。乳がんが再発・転移したマギー・ジェンクスさんの「病気であっても、患者ではなく、一人の人間に戻れるこじんまりとした家庭的な場所を」という願いを元に、英エディンバラに1996年第1号が完成した。
マギーズセンターの柱は2つ。1つは、自分を取り戻せるような居心地の良い建築と環境。2つ目は、友人のようにじっくりと話を聞き、伴走してくれるようなヒューマンサポートだ。予約なしの無料相談で、がんに詳しい専門職が対応する。運営は寄付やチャリティーで賄っている。
がんは今や治療の様相が変わり、全がん10年生存率が6割弱と、患者はがんとともに生きる時間が長くなった。一方で、在院日数の短縮や外来治療の増加で、医療者との接点が短くなった。短い時間で様々なことを決めなくてはいけない患者には、戸惑うことも多い。しかも、家や職場ではありのままの自分を見せる場所がない。そこで、自分の気持ちや思いに気付いたり、がん以外のことを考えたりすることで自分の力を取り戻す、病院と家の中間にある「第二の我が家」、あるいは「第三の居場所」として、マギーズセンターがある。
マギーズ東京には毎日20人ほど、毎月400〜500人が来訪、オープン以来、今年1月末までに1万4000人が訪れた。患者本人と家族・友人で計6割を占めた。この他、専門職や建築関係者、海外から訪れた人もいた。男女別では女性が約8割だった。
一方、スタッフは看護師や心理士、保健師、栄養士などの専門職が常勤と非常勤を合わせ計約20人、この他、非医療職やイベントサポートのボランティアなどが多数いる。また、「ストレスマネジメント」「食事と栄養の話」など「プログラム」と呼ぶグループセッションや、「マギーズ流サポート研修」なども行っている。
秋山氏はマギーズ東京の土地・建物について、「限定使用という期限付きの状態なので、少しでも長く、また新たな展開ができるよう、応援よろしくお願いします」と支援を求めた。
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