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2040年には3割を超える「お一人様」

2040年には3割を超える「お一人様」
社会保障制度を構築し直す必要に迫られる

国立社会保障・人口問題研究所が4月19日に公表した2040年までの都道府県別世帯数の推計結果は、日本国内で少子高齢化が加速化していることを改めて浮き彫りにした。

 推計によれば、40年には全世帯に占めるひとり暮らしの割合が全都道府県で30%を超える。特に、北海道、東京、神奈川、京都、大阪、福岡など8都道府県では40%台に達し、全国平均は39・3%と最高値を更新し続けている。最も高い東京にいたっては48・1%と半数近くに上る。14年公表の前回推計よりも高齢化のスピードが加速しており、このままひとり暮らし世帯が増え続ければ、経済活動にマイナスの影響を与えるだけでなく、社会保障制度も構築し直す必要にも迫られそうだ。

 推計は1966年に第1回が公表され、今回は8回目で15年の国勢調査に基づいて実施した。そのため、団塊ジュニア(1971〜74年)が65歳以上になる40年までが対象となった。

 総世帯数は15年の5333万世帯から40年の5076万世帯まで減少する。都道府県別では、秋田の減少が最も大きく22・6%減。沖縄は13・3%増など5都県で伸びるが、残りは減少する。一方、ひとり暮らし世帯は1842万世帯から1994万世帯にまで膨らむ。厚労省関係者は「少子高齢化の進展に加え、地方から都市部に若者が集中し、未婚化が進んでいることが要因だ」と分析する。

独居高齢者の孤立防ぐ支援策を

 総世帯数に占める割合を見ると、ひとり暮らしのうち、65歳以上の高齢者の世帯は15年の11・7%(625万世帯)から40年には17・7%(896万世帯)に増加する。つまり、約1億730万人のうち、ひとり暮らしの高齢者が896万人を占める計算となる。都道府県別では、40年は北海道、大阪、愛媛など8都道府県で20%を超える。75歳以上のひとり暮らし世帯は40年に10・1%(512万世帯)に上る。都道府県別では、29都道府県で10%を超える。鹿児島(14・8%)、高知(13・9%)、秋田(13・3%)、宮崎(13・2%)の各県が特に大きい割合となっている。

 国立社会保障・人口問題研究所の担当者は「ひとり暮らしの高齢者が増えることで、介護や地域の見守りなどのニーズが今後はますます高まるだろう。高齢者を社会的に孤立させないための支援策を一層考える必要がある」と指摘する。

 一方、家族のいる人も含めた世帯主が65歳以上の高齢世帯も増え、全体に占める割合は15年の36%から40年には44・2%に増える。若者が多い東京と愛知を除く45都道府県で40%を超え、東北を中心に10県では過半数を占める。秋田県では57・1%と6割に近づいている。青森も53・6%と半数を超える見通しだ。世帯主の高齢化も進む。世帯主が75歳以上の世帯は1217万世帯と全体の4分の1を占める。このうち、ひとり暮らしが512万世帯と42・1%を占めている。

 前回の推計で、ひとり暮らし高齢者数は35年に762万人だったが、今回は同じ35年時点では842万人になると推計を「上方修正」しており、全国各地で「お一人様」の高齢者が増加するスピードが速くなっていることが分かる。こうした中、「孤独死」などに各自治体が独自で対応するケースが目立つ。安否確認を目的とした夕食の配食サービスやボランティアによる家事援助、定期的に訪問するサービスを提供する市町村が増え始めている。ある自治体の担当者は「利用者は少しずつ増えており、今後はさらにニーズが増えていくだろう」と話す。

 企業側も世帯構成の変化に合わせたサービスに力を入れており、ある総合警備会社はスマートフォンで高齢者の体調を見守るサービスを始めたり、各コンビニでは単身者向けに食品を小分けにした販売を拡大したりする動きがみられる。国や市町村だけでなく、民間も含めた幅広い対応が求められるだろう。

東京一極集中、未婚化、ひきこもり

 単身者が急増する理由の1つとして、少子高齢化だけでなく「東京の一極集中」も挙げられる。40年の東京は48・1%が単身世帯で、実に「2軒に1軒がひとり暮らし」という驚くべき世帯構造になるということだ。特に65歳以上の高齢者の独居は15年に約79万人だったが、40年には117万人と急増する。この原因となっているのが、地方から東京への人口流入だ。18年の人口移動報告によれば、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)への転入者は転出者より約14万人も多い。

 これに未婚化が拍車をかける。15年の国勢調査では、50歳までに一度も結婚したことのない人の割合(生涯未婚率)が、東京都は男性26%(全国3位)、女性19%(全国1位)で、全国平均(男性23%、女性14%)を大幅に上回っている。

 今回の推計とは別に、気になるデータが3月29日に内閣府から公表された。それは、現在、40〜64歳のひきこもり状態にある人が全国推計で61万3000人に上る、というものだ。これまでは15〜39歳を対象とした推計(54万1000人)というデータはあったものの、中高年のひきこもりも若者と同様に多数に上ることが分かった。改めてひきこもりの長期化や高齢化が裏付けられた形になった。両方の数字を単純に足し合わせると100万人規模でひきこもり状態の人がいることになるのは衝撃的だ。

 内閣府の担当者は「ひきこもり支援に年齢は関係ないという意識が各自治体に広がることを期待したい」と推計調査の意義を強調する。

 さらに、内閣府の調査から新たに判明したのは、60歳以上の人が4分の1に上ることなどから、定年退職後に居場所を失ってひきこもったりするケースがあることだった。世帯数の推計が表すように単身世帯が増えれば、ひきこもり状態になる人もさらに増え続けることになるだろう。

 戦後日本では、「夫婦と1〜2人の子ども」という世帯をモデルにし、国はこのモデル世帯を軸に社会保障を始めとする各種施策を進めてきた。このモデル世帯は80年代には全体の4割超だったが、2000年に3割程度にまで落ち込み、40年には2割超にまで下がる見込みだ。経済的に困窮するひとり暮らしの高齢者が急増する懸念もある。

 例えば、単身者への国民年金の支給額は平均で月約5万5000円にすぎず、よほどの資産がない限り、これだけで生活していける高齢者は少ない。

 政府は今年10月の消費増税に合わせ、低年金者向けに月最大5000円の給付金を支給する方針だが、厚労省幹部は「今後もこうした低年金者向けの対策が必要になるだろう」と指摘する。課題は山積している。対策は待ったなしだ。

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