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未来の会

「人生100年時代」の医療について考える

「人生100年時代」の医療について考える
小泉自民党厚労部会長が医療に関する知見を発信

国の「AIホスピタル」プロジェクトを進める横須賀共済病院(神奈川県横須賀市)の長堀薫・病院長と、横須賀を地元とする衆議院議員の小泉進次郎・自民党厚生労働部会長が「医療から開ける未来」をテーマに話し合った。3月9日に同市内で開かれた日本医療マネジメント学会第18回神奈川支部学術集会の市民公開講座での特別対談である。

小泉氏は横須賀共済病院の視察を報告

 昨年10月に自民党厚生労働部会長に就任した小泉氏は、「医療や介護、年金制度、障害者雇用、働き方改革を見る中で、これらは国民生活そのものという思いを強くしています。本当に一人でも多くの国民が実情を知った方がいいと思い、自分の得た情報を共有したいと思っています」と挨拶した。

 小泉氏は今年2月、横須賀共済病院を視察し、AIホスピタルの研究やロボット手術についての説明を受けている。視察時の写真をスライドに映しながら、「人工知能はニュースで話題に出ますが、自分事と感じている人は多くないとも思います。でも、横須賀市民や三浦半島の市民にとって基幹病院である横須賀共済病院で人工知能の開発が進められようとしており、皆さんにとって身近なものになりつつあるのです」と話した。そして、AIホスピタルのプロジェクトとして同病院とAI開発メーカー「9DW」(東京都港区)が共同で開発を進める、AIを活用した音声による電子カルテの自動入力技術を紹介した。

 また、手術支援ロボット「ダヴィンチ」についても、「操作する体験をしました」と述べた。長堀氏は「ダヴィンチのコンソールボックスという操作パネルで3D画像を見ながらロボットアームを操作してもらいました。このアームを使うと、患者さんに触らずに外科医は手術ができるのです。アームは360度回転し、細かい作業も簡単に行うことができます」と説明した。

 地域がん診療連携拠点病院である横須賀共済病院は、がん相談支援センターを設置している。小泉氏も視察で見た同センターについて言及した。「がんの相談センターの存在は意外と知られていないと思うのです」と小泉氏。センターの活動例として、抗がん剤治療で髪が抜けてしまった女性にウィッグに関する説明をしたり、様々な情報提供のためのセミナーを開いたりしていることを紹介した。長堀氏も「センターではがんを克服したサバイバーの方々が患者さんの相談に乗るという仕組みもあります」と話した。

 「世界対がんデー」(2月4日)にちなみ、前日の3日に「がんと言われても動揺しない社会へ」をテーマにしたシンポジウム「Cancer X Summit(キャンサー・エックス・サミット)2019」が都内で開かれた。がん経験者や家族、医療人らが主催したイベントで、小泉氏も登壇した。

 対談で小泉氏はこの時知った、がん患者や家族が無料で相談できる施設「マギーズ東京」(東京・豊洲)に関する情報を紹介。「横須賀市でも身近に同様な場所があるわけです。2人に1人ががんになるということは、将来、私か長堀さんのどちらかはがんになるかもしれませんが、そうした時、相談できる場所を知っていると不安感も変わるはず」と話した。

 がん検診の受診率向上に積極的に取り組む自治体が増えている中、小泉氏は東京・八王子市の取り組みを紹介した。同市は「成果報酬型官民連携モデル」を導入、受診率に応じて民間に委託料を払っている。

 「自治体が行う特定健診のデータに基づき、がんのリスクが高い人を絞り込み、リスクが高い人に名指しでがん検診を受けるように勧めるのです。『皆さん、がん検診に行ってください』ではなかなか行かないのですが、『あなたは行ってください、がんのリスクが高いですよ』と個別に伝えると、人は行くのです」と小泉氏。市民への受診勧奨に漫然と税金を使うわけにいかないことから、行政コストの削減も同時に図れる。厚生労働省とも連携しながら、横須賀市にも同様の取り組みを広げていきたいという。

AIが医療従事者の働き方改革に一役買う

 医師の働き方改革が進められようとしている状況下、小泉氏は医療従事者のタスクシフト(業務の移管)にも言及した。「米国や英国では、インフルエンザの予防接種は薬局で行えます。少子高齢化が進み、医療従事者の過重労働が問題視される中、業務の範囲を考える必要が出てきています。横須賀共済病院では一歩進め、人にしかできない業務以外はAIに置き換えようとしています」と述べた。前述のカルテ音声入力技術のことである。

 長堀氏も医師の長時間労働の実態について、「外科医が36時間続けて働いていたり、睡眠時間が最大3時間という人がいたりします」と、医師のタスクシフトの必要性について賛同した。AIを活用した入力作業の自動化についても、看護師の手入力業務が減らせるメリットを紹介した。長堀氏は「病院や医師に対する患者の不満は、待ち時間が長い、愛想が悪い、説明が十分ではないなどが続く。AIを用いて入力作業が自動化され、医師が患者の顔を見て説明できる余力ができれば、これまでの不満は一度に解決できる可能性もあります」と期待を示した。

 また、小泉氏は地域医療構想に関して説明した。「出産や手術などは、病院同士が連携していきます。例えば、三浦市では出産できるクリニックがなく、市民は横須賀市、逗子市、葉山町に行く必要があります。自分の町で出産できないのはショックです。厚労省と話したところ、全国的には隣町でも出産できないところも多いというのです。30分で連携できる医療機関があるならば、三浦市は良い方だと聞きました。これは日本全体で考える必要のある問題です」と話した。

 さらに、小泉氏は「難しいのは、皆自分の家から近いところに病院があるように求めるところです。ですが、医療機関は集約する方が機能を充実させられますから、提供される医療は良くなります。そうしたことを伝える機会を増やす必要があると考えています」と述べた。

 最後に「人生100年時代の医療とは、一人ひとりが行動の変化を起こせるかどうかにかかっています。今10歳以下の子供は平均寿命が107歳と言われていますが、嘘とも思えません。将来はがんが治るようになり、歩けなかった方が歩けるようになったりするでしょう。一緒に健康づくりを進めていきましょう」と話した。

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