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「新型出生前診断」拡大に 気を吐かない大新聞

「新型出生前診断」拡大に 気を吐かない大新聞
「新型出生前診断」拡大に
気を吐かない大新聞

 日本産科婦人科学会(日産婦)は3月頭の理事会で血液から胎児の3種類の染色体異常を調べる「新型出生前診断」を拡大する方針を決めた。これまでの大病院中心の体制から診療所にも広げるもので、新聞各紙はこのニュースを翌日の朝刊で大きく伝えた。ただ、「拡大は既定路線だったとはいえ、自らの立場を明らかにしない曖昧な内容に終始した新聞が目立った」(元科学部記者)とその内容は期待外れだったようだ。

 記者によると、障害者の権利保護に力を入れる朝日新聞の報じ方は「障害者団体の声は伝えたものの、どちらかというとカップルの決断を支える体制を作ろうというリプロダクティブ・ライツ(当事者が産む、産まないを決める権利)に配慮したどっちつかずの内容だった」という。読売新聞と日経新聞は技術革新に対応が追い付いていない現状を淡々と報じ、カウンセリング体制の不備を伝えた。

 異色だったのは産経新聞と毎日新聞だ。産経は社会面でダウン症児と家族を大きく取り上げ、命の選別となる検査をどちらかというと否定的に伝えた。毎日は「日産婦 緩和ありき」「利潤生み 開業医要望強く」「遺伝カウンセリング軽視」と拡大方針に反対する姿勢を鮮明にした。前出の元記者は「産経の伝え方に新味はないが、メッセージ性は伝わる。毎日は日産婦の拡大方針をいち早く伝えるなど拡大に反対の姿勢で報道し続けてきた担当記者の執念のようなものが感じられた。拡大方針に転じた日産婦の内幕に迫る記事も読み応えがある」と評価する。

 出生前診断を巡る報道は、障害者団体の活動が活発だった時代には反対の論説が目立った。「日産婦も当事者団体の意見を聞きながら慎重に進めてきた。しかし、新型出生前診断は日産婦が主導するより先に他科で急速に普及してしまった。日産婦が禁止したところで流れは止められず、障害者団体も産まない選択をするカップルに一定の理解を見せている」(同)。

 障害の区別なく生み育てるべきと正論を主張するマスコミに、ネットでは綺麗事ばかりと批判が集まる時代だ。その中であえて「昔のまま」に留まった産経と、踏み込んで異を唱えた毎日の姿勢は評価されるべきだろう。

エボラ公表基準の実効性に
医療界から上がる疑問の声

 厚生労働省が、エボラ出血熱の感染者が国内で確認された場合の公表基準案をまとめた。「患者と接触した可能性がある人に注意を促し感染拡大を抑えるとともに、社会に過剰な不安が広がるのを防ぐため、症状が現れた後に利用した交通機関や受診までのルートも公表する」としたが、「混乱を生む原因ではないか」と疑問の声も上がる。

 都内の内科医は「エボラの疑いがある患者をみられる医療機関は限られている。症状が出ている患者の血液や体液に接触しないとほぼ感染しないとされるエボラで、発症患者の移動ルートを知らせれば、明らかに感染の恐れのない人まで指定医療機関に押し寄せることにならないか」と疑問を呈する。

 飛行機など座席の位置がはっきり分かる場合は良いが、電車やバスなどは本人の記憶頼み。症状が重篤となっていれば話も聞けまい。立ち寄った場所が繁華街など多数が行き交う場所だと、その頃同じ場所にいたとして不安を覚える人の数も桁違いだ。エボラの症状が出た患者が繁華街を歩き回る可能性は低いが、公表の際には接触した可能性のある人が、どの時点で、どのように、どこの病院を受診するかも丁寧に案内することが必要だ。

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