不当解任に対し、6人に3000万円の損害賠償求める
神奈川県立病院機構の理事長を解任された土屋了介氏が3月11日、都内で記者会見を開き、黒岩 祐治・県知事ら計6人を個人として相手取り訴訟などを起こしたことを明らかにした。
黒岩知事は2014年、土屋氏を同機構理事長として自ら招いたが、機構が管轄する県立がんセンターの放射線治療医大量退職問題などの責任を取らせる形で昨年3月、解任した。一方、土屋氏は解任を不服として、同月、神奈川県を相手取り、解任処分の取り消しを求める行政訴訟を横浜地方裁判所に起こした。
土屋氏は、同機構の財政・運営面での改革を進めたことで県との対立が深まり、がんセンターの医師大量退職問題では後任医師の確保にあたり、妨害があったと述べた。
土屋氏は、理事長の任期途中に不当解任したとして、黒岩知事や中島正信・首藤健治両副知事ら6人に連帯して3000万円の損害賠償を求める訴訟を今年3月11日、東京地方裁判所に起こした。
これに先立ち、黒岩知事ら4人に対して偽計業務妨害罪の告訴を、がんセンターの病院長と当時の放射線治療科部長の2人に対して虚偽公文書作成(文書偽造)罪と同行使罪の告発を同4日に神奈川県警に行った。
偽計業務妨害罪については、①放射線治療科部長が退職したのは、重粒子線施設責任者の資格取得のため他施設へ出向を命じた土屋氏の業務命令が原因として理事長を解任した行為②後任医師確保への妨害③県立こども医療センターの改築工事入札への妨害行為を挙げた。
虚偽公文書作成(文書偽造)罪と同行使罪に関しては、放射線治療科部長が先進医療である重粒子線治療の「既評価技術施設届出書」に、経験年数が「3カ月」のところ「2年」と記載し、厚生労働省関東信越厚生局神奈川事務所に提出した行為を挙げている。
今回の訴訟を横浜地裁ではなく東京地裁に起こしたことについて、土屋氏は「他の地方自治体でも共通した問題が多かろうと考え、東京で起こした。自治体病院では経営のガバナンスが悪いため、多額の税金が投入されている。また損害保険は、全国自治体病院協議会のOBや役員、損保ジャパンの人間が取締役に名を連ねている株式会社自治体病院共済会と契約していたが、損保ジャパンの言いなりの契約内容だった」と自治体病院の問題点を指摘した。
神奈川県警に出した告訴と告発についても、警視庁へ出そうとしたが、事前相談の結果、神奈川県警へ出すことになったという。
国家賠償法の適用を受ける不法行為について、最高裁判所は1955年(昭和30年)、公務員の個人的責任を否定している。ただ、下級審では公務員の個人的責任を認める判例が出ており、土屋氏は「個人の責任を問わないと彼らは反省しない」と話す。今回の訴訟は最高裁判例の変更を求める点でも意味があるという。
県知事が個人的責任を問われる極めて珍しい訴訟で、4月の神奈川県知事選を前に、3選を目指す黒岩知事にとって打撃となりそうだ。
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