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第15回 19年夏に向けて混沌とする薬系技官人事

第15回 19年夏に向けて混沌とする薬系技官人事

 厚生労働省の薬事行政を担う「薬系技官」。医系技官ほどの知名度はないものの、医薬品が国民生活に浸透していることを考えれば、その存在は重要だといえる。一般には薬系技官の実態は明らかにされてこなかったが、学閥など意外に人間関係は複雑なようだ。厚労省で働く薬系技官は約150人。昔は採用試験で「1種薬学」という区分があったが、今は総合職の採用試験のうち「化学・生物・薬学」に合格した人が採用される。近年の採用者数は7〜9人で、薬学部だけでなく理工学部や農学部出身者からの採用者もいるという。

ある中堅職員は「必ずしも薬剤師資格が採用に必要な訳ではない。医療機器なども所管しており、薬剤師資格を持っていない人も結構いる」と明かす。医系技官には臨床経験をした後の中途採用も比較的多いが、薬系技官は新卒採用が主なのが特徴だ。

 薬系技官の最高ポストは、医薬担当の大臣官房審議官だ。医薬・生活衛生局長が直接の上司だが、薬事行政においては局長よりも影響力は大きい。現在、その審議官の任に就いているのが森和彦氏(1983年入省)だ。15年10月から「長期政権」を敷いている。森氏は東京大院を修了後に入省し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審議役や厚労省の医薬食品局安全対策課長、医薬食品局審査管理課長の要職を歴任した。ある業界紙記者は「専門家気質でコミュニケーション能力に乏しい薬系技官が多い中、森氏は人前でしゃべるのがうまい。人柄も良く、慕っている部下も多い」と指摘するなど評判は上々だ。現在は、医薬品医療機器等法(薬機法)改正案の陣頭指揮を執っている。

 現在の話題の中心は、「ポスト森」を誰が務めるかだ。薬系技官内には伝統的に「東大閥」と「京大閥」があるが、近年台頭してきているのが私大勢で、その筆頭格が東京理科大を卒業した磯部総一郎・医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長(85年入省)だ。医政局経済課長補佐や保険局医療課薬剤管理官など枢要なポストを歩み、二川一男・元事務次官(80年入省)が医政局経済課長を務めた時に課長補佐として仕えていた。ある関係者は「髪の毛が少ない風貌もパワハラ気質もそっくり。二川元次官に取り入り、私大卒業でありながら出世していった印象だ。特に事務系のキャリアにゴマをする傾向がある」と話す。

 その磯部氏の対抗馬が、山本史・医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長(88年入省)だ。東京大院を修了した「正統派」だが、磯部氏が今回の薬機法改正案に違法広告で収益を上げた製薬企業に対する課徴金制度創設を盛り込むなど目立っているのに対し、山本氏は先駆け審査制度を手掛けるものの派手さに欠ける。ただ、「昨今の女性活躍の波に乗る可能性はある」(省中堅)との声もあり、不透明な状況だ。

 この他、注目される中堅として京都大を卒業した安川孝志・医薬・生活衛生局総務課薬事企画官(97年入省)や、東京大院を修了した田宮憲一・薬剤管理官(94年入省)が挙げられる。

 薬系技官は製薬業界との関わりも深く、業界団体に再就職するOBもいるなど、その「癒着」体質は批判されがちでもある。こうした指摘も影響するかは不明だが、「ポスト森」の行方は2019年夏の幹部人事の静かな焦点の一つでもある。

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