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未来の会

北原病院グループ「八王子モデル」がグッドデザイン賞

北原病院グループ「八王子モデル」がグッドデザイン賞
カンボジアでの成功を機にベトナム・ラオスにも医療てこ入れ

北原病院グループ(医療法人社団KNI、株式会社Kitahara Medical Strategies International〈KMSI〉)が取り組む「サスティナブルな『医療』を実現する-八王子モデル-」が、2018年度グッドデザイン賞(主催・公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞した。モノの受賞イメージが強い同賞だが、八王子モデルが超高齢社会に求められる社会リデザインに必要な「サービス」として高い評価を受けた。

 病院のブルーゾーン化と全自動運転化

 八王子モデルは今後一層進む少子高齢化と、同時に問題化する社会保障財源の枯渇の中で、医療・社会の機能を維持するための事業で、次の四つのシステムにより構成されている。 

 ①ヒーリングファシリティ:人と自然と技術の調和により、そこに身を置くだけで自然治癒力が高まって健康になれる空間。免疫力を高め、病気になる人の数を減らすことを目指す。

 ②デジタルホスピタル:IT(情報技術)/AI(人工知能)を駆使し、それ自体が患者の状態を把握し治療する機能を持つ、“全自動運転化”を目指す病院。診療レベルの向上と業務効率化により医療現場の生産性を飛躍的に向上させることを目的とする。

 ③デジタルリビングウィル:医療・生活情報や急病時に受けたい医療、その後送りたい生活、行いたい葬儀など、意思を登録するデータベース。

 ④北原トータルライフサポート倶楽部:デジタルリビングウィルに登録された情報を基に各人が適切なサービスを受けることができる会員制サービス。会員は急な病気になった時などに協力医療機関で本人の意思に沿った速やかな対応を受けられる。また、「成果保証型リハビリテーション(医療保険の枠を超えた利用者独自の目標を達成するためのリハビリ)」や「なんでもサポートサービス(介護保険適応外の生活サポートサービス)」などを受けることができ、救急医療だけでなく、退院後の生活全般を支えていくためのサービスとなっている。

 具体的には、①は北原リハビリテーション病院(東京・八王子市)が、世界で健康寿命が優位に長い地域「ブルーゾーン」を目指し、温泉棟や緑地庭園、小動物との触れ合いの場などを整備、健康と長寿の条件の一つと言われる「人との繋がり」の場を作ろうとしている。

 ②についても同病院で、顔認証システムによる入退管理、スマホと電子カルテの完全連動などを行っている。現在も企業や大学と複数の技術を開発しており、今後、より一層、医療の質の向上と業務の効率化を進め、最終的には航空機の全自動運転のように、病院の全自動運転を目指している。

 ③についてはデータベースの構築や登録端末の開発などを進めており、2019年にもプロトタイプでのサービス提供を予定している。

 ④については急病時に関連病院である北原国際病院での受け入れサービス、リハビリテーションサービス、ケアサービスの提供を開始している。

 また、現在、独居の高齢者が倒れ、専門的な検査や手術が必要な場合、家族や本人の承諾が取れない状況でも、事前登録していれば、適切な処置をすぐ受けられるよう行政と話し合いをしている。全てのサービスが受けられる「ブロンズ会員」は年会費6万円(税抜)、デジタルリビングウィルと定期的な身体認知機能のチェックのみを利用できる「ローズ会員」は同1万8000円(税抜)だ。

 いずれも自費のサービスだが、北原病院グループでは高品質低価格を目指している。まずグループの拠点である八王子市で八王子モデルを完成させた上で、日本各地に広めていくことで、国の財源に頼らないサスティナブル(持続可能)な医療・社会の実現を図るという。

 ベトナム・ラオスに日本の医療を輸出

 同グループはアジアでも活動を展開している。北原病院グループの関連会社が16年10月からカンボジアで運営する「サンライズ・ジャパン・ホスピタル・プノンペン」で、同国初の電子カルテによるIT化を実現。アジアでも医療のIT化を進めている。

 また、同グループは今年10月、昨年6月に締結したベトナムの国立ベトドク病院との技術協力(脳神経外科、リハビリ)の追加合意書を、新たにラオスの国立ミタパブ病院との技術協力(同)の合意書をそれぞれ締結した。八王子モデルの国際化も進み始めている。

 

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