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スタートした新専門医制度を 社会にしっかりと定着させる

スタートした新専門医制度を 社会にしっかりと定着させる

寺本民生(てらもと・たみお)1947年福岡県生まれ。73年東京大学医学部卒業。同年同大医学部附属病院内科研修医。75年日立総合病院。同年東京日立病院。76年東大病院第一内科医員。80年東大医学部助手。80〜82年シカゴ大学留学。90年東大病院第一内科医局長。91年帝京大学医学部第一内科助教授。97年同大医学部内科教授。2001年同大医学部内科主任教授。10年同大医学部長。13年同大理事・名誉教授。寺本内科・歯科クリニック内科院長。18年7月日本専門医機構理事長。

当初の予定から1年遅れ、今年4月に日本専門医機構の新専門医制度がスタートした。いよいよ学会以外の第三者による専門医認定が始まるわけだが、大きな期待が寄せられる一方で、うまくいくのだろうかと不安視する意見もある。専攻医の東京集中問題、機構のガバナンス問題、そして今後の見通しなどについて、7月に理事長に就いた寺本民生氏に話を聞いた。

——理事長として取り組んでいくことは?

寺本 前の執行部のご尽力で、ようやく平成30年度から新しい専門医制度が開始されたところです。今年度は1年目ということもあり、様々な問題を抱えた状態で動き始めています。現在の段階では、この専門医制度がしっかりした制度として定着していくことが重要だと考えています。2年目、3年目と積み重ねていく中で、次第に固まっていくのでしょう。理事長としての私の役割は、この制度を継続していきながら、しっかりしたものにしていくことだと考えています。これが一つです。二つ目には、不信感の払拭を挙げたいと思います。残念なことですが、情報が十分に伝わっていなかったことなどで、日本専門医機構に対してある種の不信感を持つ人もいたと思います。こうした不信感を払拭していくことも、私の役目だろうと思っています。三つ目は、専門医として認定されることが、社会できちんと受け止められ、彼らの人生のキャリアパスとして重要なものになるようにしていくことです。そのためには、制度設計をもう少しきちんと行っておく必要があるかもしれません。

——社会で認知されることは大切ですね。

寺本 現在は学会認定の専門医が標榜できることになっていますが、機構認定の専門医を標榜できる形に持っていく必要があります。標榜できることで初めて社会で広く認識されることになります。専攻医の人達にとって、新専門医制度が夢の持てる制度になっていくためには、これはどうしても必要だと考えています。

——この制度がうまくいくのか不安視する意見もあるようですが。

寺本 過去には大学入試のセンター試験などでもありました。スタートした頃はいろいろ問題があっても、次第に整っていきます。最初から全てがうまくいけばいいのですが、なかなかそうはいきません。我々としても、着実に制度としてきちんとしたものにしていきたいと考えています。

——理事長になる前から監事として機構には関わってきたわけですね。

寺本 監事という立場と理事あるいは理事長の立場は違う、ということはよく理解しています。理事長になる前は監事でしたから、どちらかと言えば、理事会に対して批判的な目を向けてきました。特に会計面に関して監視する立場と考えておりましたから、理事の先生方の議論に介入することはあえてしないできました。ですから、監事の時に言っていたことと違うじゃないか、ということが出てくるかもしれません。立場が違うので、そういうこともあるだろうとは思っています。

——新制度に対する専攻医達の感想は?

寺本 どうでしょうね。その辺りの調査は、まだ行っていませんので、はっきりしたことは分かりません。ただ、新専門医制度の基本領域に関しては、原則としてプログラム制となりますから、それに慣れていないために、戸惑いを感じている人もいるかもしれません。

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——プログラム制を導入したのはなぜですか。

寺本 アウトカムとして何を求めるか、つまり目指すべき専門医像はどのようなものかということを明確にして、そこに向かってやるべきことを積み上げていくのがプログラム制です。カリキュラム制では、目指す専門医像が明確になりにくく、どうしても単位取得が中心になってしまいます。できればプログラム制で、自分の目指すアウトカムを明確にして、そこに向かって研修してもらうのがいいと思います。

——カリキュラム制も選べるのですか。

寺本 プログラム制での研修が原則ですが、この点には柔軟性を持たせています。というのも、研修を受ける人達は、ライフステージにいろいろ変化がある年代です。結婚もあるし、女性なら出産があるかもしれません。人によっては介護の問題もあるでしょう。留学したいということもあると思います。そういう場合に、ずっとプログラム制で続けるのは大変だということで、カリキュラム制を導入することもできるようにしています。

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