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医療界の「損税解消」案に厚労省は冷ややか

医療界の「損税解消」案に厚労省は冷ややか
「提言案を実現することは不可能に近い」との声も

来年10月に消費税率が10%に引き上げられるのを前に、控除対象外消費税(損税)問題の解決に向けた日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会と四病院団体協議会の新たな提言が波紋を呼んでいる。診療報酬で補填する従来の方法に加え、医療機関ごとの申告により過不足に個別対応するものだからだ。三師会などは2019年度税制改正で実現するよう求めているが、厚労省内からは「そのまま実現することは不可能に近い」との声が出ている。

 提言を具体的に紹介すると、診療報酬に補填する方法を踏襲した上で、個別の医療機関ごとに「診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額(消費税補填額)」と、「負担した控除対象外仕入れ税額(医薬品・特定保険医療材料を除く)」を比較し、申告によって補填の過不足を充足する仕組みだ。適用対象は、消費税及び所得税について実額計算で申告している医療機関開設者に限った。適用対象外は、自由診療等収入が1000万円以下の消費税免税事業者▽自由診療等の課税売上が年間5000万円までの消費税簡易課税事業者▽医業収入が年間7000万円以下など所得税について概算経費の特例(4段階制)利用事業者の3類型を挙げた。

 また、これまでの消費税補填額を算出する計算方法も公表。税率5%までの消費税補填額については、「マクロ的な比率を用いて把握する」とし、上乗せ率は1989年の税率3%時で0・11%、97年の税率5%時で0・32%の計0・43%をベースに診療種類別の上乗せ率を計算。8%に引き上げた2014年時は初診料、再診料、各入院基本料などに消費税対応分が上乗せされたため、それぞれの点数に個別の医療機関などの算定回数を乗じたものを消費税補填額とした。

 10%への引き上げ対応について、「14年と同様の対応が必要だ。10%引き上げ時の診療報酬改定では、税率5%超8%までの部分の補填状況について検証を行い、補填のばらつきを是正した上で、新たな仕組みをスタートさせることが肝要だ」と提言は強調している。

 厚労省内ではデータ処理問題があったにせよ、今回の提言には冷めた意見が大勢を占めている。ある省幹部は「個別の医療機関ごとの申告に対応するのは事務処理上、不可能といえる。仮に医療機関が水増し請求しても検証することが難しい。いずれにしても現実的な提案ではない」と突き放す。別の幹部は「これまで医療界として意見集約できなかったが、実現するかはともかく、ようやく提言をまとめることができた、というぐらいの意味合いしかない」と解説する。

 提言では「医療機関等種類別の補填のばらつきを丁寧に検証し、是正する。その後の診療報酬改定でも必要に応じて検証、是正を行う」と宣言している。厚労省内でも、補填不足とされる病院などへの対応は必要だとの認識では一致している。ただ、医療界が提示した今回の提言ではなく、従来の診療報酬の上乗せ方式に加え、基金で不足分を補填する対応策が省内で検討されている。これからしばらくは年末に向け、三師会を含め財務省や厚労族議員など関係各所を巻き込んだ攻防が繰り広げられそうだ。

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