患者囲い込み防止とサブアキュート機能評価の流れへ
2014年度の診療報酬改定で新たに導入された「地域包括ケア病棟」は、2018年7月現在(6月届出まで)、2218病院に開設され、病床数は推計で約7万2700床に達するとされる。4月の診療報酬改定で、さらに参入がしやすくなった地域包括ケア病棟の今を探る。
地域包括ケア病棟とは、かつて亜急性期病棟と呼ばれ、急性期を脱した状態であるが、まだ治療やリハビリが必要な状態(亜急性期)の患者の受け皿となっていた。その名称が変更されるとともに、より自宅への退院に向けた内容の医療を目指し、入院料の算定も変更された。
2025年に向けて地域包括ケアが目指すのは「ときどき入院 ほぼ在宅」の実現で、その根幹をなす地域包括ケア病棟は、高度急性期・急性期医療から在宅療養までを結ぶ役割を担うため、以下の三つの機能を持つ。
まず、高度急性期病院などから回復期リハビリテーションが必要な患者の受け入れ(ポストアキュート機能)、発症前から生活支援が必要な在宅療養患者や介護施設などの入所者の急性憎悪時の受け入れ(サブアキュート機能)、さらに、これら二つを補完し、一般病棟の機能を代替した在宅復帰への支援(周辺機能)である。
多様な患者の受け入れ促進を図るため、診療報酬面でも手当てがなされている。地域包括ケア病棟入院料(管理料)の入院料は包括だが、手術と麻酔は出来高算定で、入院料とは別に、実施した分の点数を算定請求できる。500床以上の病床または集中治療室などを持つ病院では、届出病棟数は1病棟までと参入が制限されている。
大病院では院内他病棟からの入棟が最多
実際に地域包括ケア病棟に入院した患者のルートでは、200床以上の大規模病院は、院内の他病棟からの入棟が最も多く8〜9割に達するとされ、自院の中でポストアキュート機能を担っているようだ。
一方、200床未満の中小病院では、家庭や他の病院、診療所、介護施設などからの入院が多いとされており、サブアキュート機能を担っているとされる。
医療機関の規模により地域包括ケア病棟の担う役割は多様化しており、地域医療における医療機能の分化・促進に寄与していると、一定の評価を得ている。
急性期病棟を持ちながら地域包括ケア病棟を開設した場合は、平均在院日数は顕著な短縮効果が得られている。地域包括ケア病棟は、在宅復帰に向けてリハビリなどを提供することから、入院期間が60日と急性期病棟に比べて長めに設定されている。
急性期を脱した患者を地域包括ケア病棟が円滑に受け入れることで、急性期病棟では患者に短期集中的な医療を提供することができ、平均在院日数が短縮され、施設基準をクリアできるようになっている。
地域包括ケア病棟は、7対1や10対1など、急性期病棟からの転換が圧倒的に多い。入院料については、2014年度から導入された病床機能報告制度によれば、回復期病棟で増加が著しいのが、地域包括ケア病棟入院料である。背景には、届出病床数が多い7対1病棟は、施設基準が厳格化され、基準を満たしていない病棟が他の機能の病棟への転換が必要になったことが大きいとされる。
診療報酬改定でさらに増やす方向へ
さて、2018年度の診療報酬改定においては、地域包括ケア病棟をさらに増やすような方向性が強く打ち出された。
それ以前は、地域包括ケア病棟を届けるための施設基準があり、在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院として3件以上の受け入れ実績、二次救急医療施設、救急告示病院のいずれかを満たしていなくてはならなかった。
これが、200床未満の病院や医療療養病床を主体とした病院などでは高い参入障壁となっており、2018年度改定では、病院敷地内に訪問看護ステーションがあれば、新たに地域包括ケア病棟の届け出ができるようになった。
さらに、200床未満の病院の場合は、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などを踏まえた看取りに対する指針の策定を要件として、基本的評価に加えて実績を反映した評価がなされる「地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料を含む)1・3」が新たに設けられた。
また、在宅患者支援病床初期加算は、自宅など(介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームを含む)から入院した患者に対して、治療方針に関する患者またはその家族などの意思決定に対する支援を行うことを要件に、入院日から14日を限度に、1日につき300点となり、急性期患者支援病床初期加算の倍となる。
一方、自院及び他院の急性期の一般病院から転棟・転院した患者の場合には、急性期患者支援病床初期加算として区別されるようになった。
これらの措置から読み取れるのは、自宅などで療養する患者の受け入れが、それまで以上に期待されているということだ。
一方、200床以上の病院は、新設の「地域包括ケア病棟入院料1・3」による実績評価の対象には含められないものの、医療資源が少ない地域の41の二次医療圏や離島などは、2割増の240床未満と条件緩和がなされた。
さらに、高度急性期機能を重視した大病院の場合、自院からの転棟患者の割合が多いことから、地域ケア病棟届出制限(1病棟まで)は、500床以上から400床以上と厳格化され、地域内医療機能の分化連携が促されることになった。
地域包括ケア病棟協会が、会員病院を対象に実施した調査(n=469)によれば、約3割に当たる117病院が、入院料(管理料)1ないし3を届け出ていた。
届けていない7割のうち、141施設(43.0%)も届け出を検討し、「自院で訪問診療や往診を展開する必要があると要望があった」とする施設を加えると、8割近くに上ったという。
地域包括ケア病棟を導入した大病院では、急性期病棟の回転率が向上して、手術料などの出来高部分を加えた入院料の収益が、病院の収益向上に繋がったという報告は多い。
しかし、経営面ではプラスとなっても、多様な患者を受け入れ、地域包括ケアを促進するという本来の趣旨には合っていないことは自覚しなくてはならない。
今後、急性期病棟との機能分化の促進を図るため、自院の中での患者の“囲い込み”を防止し、サブアキュート機能を評価する流れも強化されることになるのではないかと見られている。
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