人が集まる病院を目指したデザイン
埼玉石心会病院(埼玉県狭山市)
埼玉石心会病院は設立30周年の昨年11月、西武新宿線狭山市駅から徒歩約10分の場所に、新築移転した。旧病院は新病院から1.8kmの場所に、288床の急性期病院として1987年に開院したが、狭隘化や老朽化などにより施設拡大の必要性があった。
ユニークなのは「狭山湘南化計画」。持田和夫・統括事務部長は「病院経営で大切なのは人材。例えば、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)ができ、湘南からでも車で約1時間で通勤できる。そういった人も応募したくなるような病院を目指した。建物としての設計やデザインは地域のランドマークになるような建物、『病院らしくない病院』を計画した」と説明する。色使いについては、自然の生命力を院内に生かすために、南仏プロヴァンス地方の植物に由来するカラーを取り込んだ。緑色はオリーブ、黄色はひまわり、紫色はラベンダーなどだ。
石心会の基本理念は「断らない医療」「患者主体の医療」。加えて、石原正一郎病院長の「患者さんだけでなく、働く職員にとっても良い病院を作りたい」という考えの下、広々としたレストランや更衣室、保育施設などを設けた。さらに、レストランにアイスクリームマシンを導入したり、1階のカフェで早朝より焼き立てパンを販売したりしている。
移転前の旧病院の病床数は349床だったが、新病院では101床増床して450床になった。CTやMRIは1台だとオープン検査(機器共同利用)などで使用できないこともあるので、3〜4台と複数導入。また、「低侵襲脳神経センター」「心臓血管センター」「ER総合診療センター」を設置、地域医療の土台の上に、専門性の高い医療を提供している。
同病院は地域医療支援病院、埼玉県がん診療指定病院、臨床研修指定病院である。がん医療では緩和ケア病棟を20床持ち、国立がん研究センターやがん研究会有明病院などと連携。救急車は年間約7500台を受け入れている。また、地域の医療人材育成の一環として、子供達に医療に興味を持ってもらおうと、手術の模擬体験ができる「ブラック・ジャックセミナー」などを開いている。
「患者さんやご家族から安心して任せていただける温かい病院。地域の先生達からも頼りにしていただける病院」が目標という同病院は、埼玉西部地区の医療を支える基幹病院として存在感を発揮している。
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