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米朝首脳会談後の国際社会を 日本はどのように進むべきか

米朝首脳会談後の国際社会を 日本はどのように進むべきか
中林美恵子(なかばやし・みえこ)埼玉県生まれ。大阪大学大学院博士課程修了(国際公共政策)。米ワシントン州立大学大学院修士課程修了(政治学)。1992年米国永住権を取得。同年米国家公務員として連邦議会上院予算委員会に正規採用され、2002年まで勤務。その後帰国、独立行政法人経済産業研究所研究員、跡見学園女子大学准教授などを経て、09〜12年衆議院議員。13年早稲田大学准教授。17年同大学教授。18年米マンスフィールド財団名誉フェローを兼務。『トランプ大統領はどんなひと?』『トランプ大統領とアメリカ議会』など著書多数。

昨年まで実現するとは思えなかった米朝首脳会談が、ついに行われた。トランプ大統領が自画自賛するこの会談を、どう評価すべきなのか。また、これにより東アジアの政治情勢はどう変わっていくのだろうか。かつて米国の連邦議会で働いた経験を持つ中林美恵子氏に、米国をはじめ中国、ロシア、韓国の思惑なども含め、日本の進むべき方向について伺った。

——米朝首脳会談をどう評価していますか。

中林 首脳会談を開くことで、大きな枠組みだけは決まりましたが、中身はスカスカで、ほとんどは今後の協議に委ねられています。問題が先送りされたと考えていいでしょう。従って、今後の協議が非常に重要ですし、困難なものになると思います。それが、現在、東アジアの国々が直面している大きな懸案なのかもしれません。

——今後の協議は順調に進むでしょうか。

中林 トランプ大統領という稀有なアメリカのリーダーが誕生したことで、国際社会がこれまで築き上げてきた蓄積や、同盟国との長年にわたる絆などがとても不安定になっています。その中で、北朝鮮は「アメリカが信頼できる国になれば、自分達は核を放棄する」と言い、アメリカは「北朝鮮がきちんと行動を起こせば、見返りを用意する」と言っているわけです。しかし、協議していく中で、どちらかが止まってしまえば、そのままの状況が続くことになるでしょう。核問題も、ミサイルや化学兵器の問題も、拉致問題も、そのままになる可能性があります。

——日本にとっても影響は大きいですね。

中林 今後の協議が止まってしまい、北朝鮮が核を持ち続けることになると、外交にも安全保障にも大きな影響を及ぼします。拉致問題にしても、

核という大きなカードを持つ相手と交渉することになるわけです。日本のカードは経済協力ですが、2002年の小泉首相訪朝の頃に比べると、現在は中国の経済力が大きくなっているので、日本のカードの価値は当時ほどではなくなっています。

——北朝鮮の非核化は実現するでしょうか。

中林 アメリカが目指すと言っている、完全で検証可能な後戻りすることのない核放棄が実現すればいいと思いますが、たとえできたとしても、それには5年も10年もかかると専門家は言っています。長い道のりになるわけですが、それをトランプ大統領がトップダウンで決めてしまったわけです。会談の実現を最優先したため、過去(1994年、2005年、2012年)の非核化合意よりも内容が希薄だとの批判もあります。

——アメリカ国内の反応はどうなのですか。

中林 米朝首脳会談を行うというのは、アメリカ国内向けには賢明な選択だったのでしょう。決まったことは具体性に欠けているけれど、とにかく金正恩・朝鮮労働党委員長と会って信頼関係を築けたと、トランプ大統領はアピールしています。様々な世論調査がありますが、アメリカ国民の51%があの会談を支持している、という調査があります。70%を超える人が支持という調査結果もあります。いつ戦争になるかという緊張関係がひとまず落ち着いたのは歓迎すべきことだ、というのがアメリカ人の一般的な受け止め方なのです。

東アジアの情勢と各国の思惑

——各国の思惑はどんなところにあるのでしょう?

中林 トランプ大統領にとっては、今回の会談は、自分の政治的勝利のために大事だったわけです。今秋、中間選挙があり、2年後には大統領選を控えています。国内では大きな問題が山積しているので、北朝鮮とのディールによってポイントを稼ぐ。それによってトランプ大統領が得る果実は結構大きく、世論調査が証明しています。良いニュースが欲しいので、トランプ大統領は是が非でも会談をしたかったのです。

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