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未来の会

変革期を迎えた「病院の進むべき道」 ~医療における需要と供給のミスマッチを正す~

変革期を迎えた「病院の進むべき道」 ~医療における需要と供給のミスマッチを正す~
相澤孝夫(あいざわ・たかお)1947年長野県生まれ。73年東京慈恵会医科大学卒業。信州大学医学部附属病院、特定医療法人(現・社会医療法人財団)慈泉会相澤病院副院長、社会福祉法人恵清会理事長を経て、94年慈泉会相澤病院理事長・院長。2010年日本病院会副会長、17年6月同会長、慈泉会理事長・相澤病院最高経営責任者。長野県松本日中友好協会会長、全国病院経営管理学会会長、地域再生医福食農連携推進支援機構理事長などを務める。

働き盛りの患者が減少していき、高齢の患者が増えていくことで、求められる医療の内容が大きく変わろうとしている。こうした医療需要の変化に、日本の病院はうまく対応することができず、需要と供給のミスマッチが生じているという。このような時代の中で、日本の病院はどのように変わることが求められているのだろうか。日本病院会(日病)の会長に就任して2年目に入った相澤孝夫氏に、日本の病院の進むべき方向を聞いた。

——日病の会長として今後やりたいことは?

相澤 医療を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。働き盛りの患者が減り、高齢の患者が増えることで、医療の需要が変わってきているにもかかわらず、病院側は旧態依然としたままで、従来のやり方から脱皮できていません。今までの状態を基盤にして物事を考えているので、どうしても医療における需要と供給のミスマッチが起きてしまうのです。現在、病院の経営が苦しくなっているのも、このミスマッチが原因です。だとすれば、ここでパラダイムシフトが必要です。これまで当たり前と考えていたこと、これまで普通であったことを抜本的に変えていく必要があります。ところが、なかなか変えられないのが現状です。それを需要と供給がしっかりマッチする形に変えていくのが、私の責任であると考えています。難しい変革の時代に会長を引き受けたわけで、やりがいはありますが、実際大変です。

——具体的にはどのようなことをするのですか。

相澤 昨年までは、社会保障審議会や厚生労働省の会議などで、いろいろと意見を申し上げつつ変えていこうと思っていました。しかし、それだけでは無理で、違う方法論も考えなくてはいけないようです。そこで取り組みたいのが、一つは医療現場で働く医師や病院職員の皆さんの意識改革です。それに加え、やはりロビー活動もしなければ無理だな、という感じも強く持っています。どこまでできるか分かりませんが、そういったこともできる限りやっていこうと思っています。そんなに時間はありません。国は平成30年、31年くらいで、その後のことをきちんと決めていくと言っています。今年と来年で、変わるべき方向をきちんと示し、変われるところから変わらなければならないでしょう。

——日病の会長として何を期待されていると感じていますか。

相澤 これまでは公的病院と私的病院から交互に会長が出ていました。決まりはありませんが、慣例でそうだったわけです。今回初めて私的病院から私的病院への引き継ぎとなるため、よく考えました。ただ、医療法人は給料の払い方や人材の処遇の仕方という点で自由度が高く、それだけ多くの経営的な判断を行う必要があります。現在のような変革期に、私のような医療法人出身者が会長になるのは、意味があるのではないかと考えました。それが会長をお引き受けした理由です。

医師の働き方改革への対応

——議論されている医師の働き方改革には、どう対応していきますか。

相澤 医師の働き方に限れば、私はどこかの時点で、2交代制や3交代制を導入せざるを得ないと考えています。特に救急医療ではそうです。ただ、現在救急をやっている全ての病院でそれが可能かといえば、それはとても無理なので、救急医療の集約化が必要だと思います。実際、相澤病院は1次救急から3次救急まで全て行い、救急分野だけは8時間勤務と16時間勤務の2交代制を導入しています。人口30万人圏に1カ所、救急をきちんとやる病院が必要であると国土交通省が言っています。それが本当に適切であるかどうかは分かりませんが、ある範囲にきちんとした救急医療を提供できる病院があれば、それをどうサポートしていくかを考えることで、地域の中で効率よく救急医療を提供できると思います。

——救急医療についてはER(救急救命室)が合理的であると主張されていますね。

相澤 日本では1次救急、2次救急、3次救急と分けることに固執していて、さらに1次救急と初期救急が同じだと思われているのが問題です。外来で帰れる軽い症状を扱うのが1次救急。初期救急は、軽症であろうと重症であろうと、最初に対応する救急のことです。例えば、歩いて病院に来た人が胸の苦しさを訴えている場合、心筋梗塞ということになれば重症です。これを判断するのが初期救急です。ERは初期救急を行い、1次救急から3次救急まで、どんな人が来ても対応できます。この形が合理的だと思うし、人の使い方を考えても、そこに集約できるというメリットがあります。救急患者をいったんそこで受け入れ、そこから連携する病院に分散させていけばいいのです。そういう面が日本の救急医療には欠けています。

——医療連携が医師の働き方改革にも繋がるのですね。

相澤 一つの病院で医療の効率化を図るなどということはできません。ある範囲の医療圏単位で効率化を図る必要があります。それによって病院の機能分化が進み、病院と病院の連携も行われるようになっていきます。そうしたことをきちんと構築していくのが、地域医療構想であると思っています。ところが、実際には、地域医療構想はつまらない病床数の話ばかりになっています。


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