子ども達の健康を守るため現状把握と対策が急務
学校健診で受診が必要だと診断されたにもかかわらず、受診していない小中高生が多数に上るという調査結果を、全国保険医団体連合会(保団連)が6月7日、公表した。保団連では未受診の背景に「子育て世代の貧困」があると見ている。
歯科では、全国21の保険医協会・医会が「学校歯科治療調査」を行い、保団連が中間報告としてまとめた。歯科検診を受け、歯科受診が必要と診断された児童・生徒の未受診率は小学校が52・1%、中学校が66・6%、高校が84・1%。特別支援学校が55・8%と、小中高では高学年になるほど未受診が増加する傾向となっている。未受診者は人数にすると、25万9724人になる。
虫歯が10本以上あったり、歯の根しか残っていないような歯が何本もあったりして食べ物がとりづらくなる「口腔崩壊」の子どもがいると答えた学校は、小学校が39・7%、中学校が32・7%、高校が50・3%、特別支援学校が45・1%だった。
歯科を受診しない理由として、「保護者の関心の低さ」「家庭環境(共働き、一人親など)」「経済的理由」「地理的困難」「本人の歯科治療への忌避」などが挙げられ、こうした理由が複雑に絡み合っている点も指摘されている。
保団連では、口腔崩壊が全国に広がっている状況について「保護者の無関心やネグレクトなど様々な問題とともに、格差と貧困、保護者の厳しい就労状況などから受診が阻害されている。改善に向け、学校関係者や歯科医療関係者、行政など社会全体で取り組んでいくことが必要」としている。
医科では、大阪府保険医協会と大阪府歯科保険医協会が同府内の小中高校を対象に実施した「学校健診後治療調査」の結果が公表された。健診で受診が必要と判断された児童・生徒の未受診率は眼科では小学校が46・7%、中学校が66・0%、高校が87・1%で、全体では62・9%だった。記述式では「視力低下の児童が多く、座席配置が困難」(小学校)、「メガネのツルが折れてもテープで止めて使っている」(中学校)、「黒板が見えにくい状況で学習意欲が低下」(高校)などの回答があった。
耳鼻科の未受診率は小学校が34・0%、中学校が63・7%、高校が70・8%で、全体では42・8%。記述式では「症状がひどくても市販薬を使ったりして我慢している」(中学校)などの声があった。
内科の未受診率は小学校が44・4%、中学校が59・5%、高校が65・7%で、全体では51・6%。記述式では「保健室への来室児童は腹痛・頭痛が多い。頭痛は睡眠不足、腹痛は精神的なものに思える」(小学校)、「不定愁訴で保健室に来室。親が多忙、経済的事情もあり、受診せず」(高校)などの回答が寄せられた。
医科の未受診の理由は「保護者の子の健康への理解不足」が最も多く、「経済的困難」「共働き」「一人親家庭」が続いた。高校では「経済的困難」が最も多く、「中学卒業年度までが助成の対象の自治体が多いため、対象外の高校生は3割負担が必要になるからでは」との指摘があった。
両協会は未受診をなくすため①行政による一刻も早い実態把握②「学校医療券」の活用・運用改善③「子ども医療費助成制度」の抜本的な拡充による子ども達の医療アクセスの向上──などを求めている。
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