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第9回 働き方改革を担保する監督官の質が低下

第9回 働き方改革を担保する監督官の質が低下

 働き方改革が脚光を浴びる中、密かに違法残業を取り締まる「労働基準監督官」(以下、監督官)の存在に注目が集まっている。大手病院やマスコミなどに強制捜査が入る様子がテレビなどで繰り返し報道されてきた影響だろう。注目度が上がるのに比例し、採用人数は増えているものの、省内では人材の「質」の低下も指摘され始めている。

 監督官は、国税財務専門官と同様の労働基準局の専門官職だ。長時間労働の是正や残業代の未払いなどを指導する他、抜き打ちで立ち入り調査を行う。今年度は約3000人おり、近年は年に200〜250人が任官され、まずは労働大学校で3カ月ほど研修を受ける。3年目までは全国各地の労働基準監督署に配属され、監督官としてのスキルを現場で学ぶ。4年目以降は2カ所目の労基署に移るか、本省勤務かとなり、その後の経歴は多様になる。地方勤務を希望すれば、最終的には出身地などの労基署長になれる。本省勤務の出世コースを歩めば本省の課長となり、京都など審議官級の労働局長まで登り詰めることができる。

 6月現在、監督官のトップとも言える本省課長は労働基準局労災補償部補償課長の荻原俊輔氏(1983年、旧労働省)だ。「理屈っぽい堅物」(中堅監督官)として知られる。実は、全国の労基署を指揮命令できる権限を持つ監督課長は近年、キャリア官僚に奪われている。また、監督官にとってもう一つ重要なポストが監督課の主任監察官だ。監督行政に携わる監督官としては現在では最高のポスト。東京労働局労働基準部長を経て着任する。6月現在の任は岩瀬信也氏(84年、旧労働省)だが、パワハラ気質で有名。「なかなか決裁を通さない嫌がらせを受けた」(別の監督官)との不満も聞こえる。

 本省内には、監督官業務を重視するたたき上げ派と管理業務を歩む派に分かれており、現在は管理系が優勢だという。萩原氏や岩瀬氏も管理系だ。

 電通の過労死事案で注目を集めたのが、「過重労働撲滅特別対策班」。通称「かとく」だ。東京と大阪の労働局と本省に組織され、地方勤務が長いたたき上げのベテランの監督官が勤務する。主に大手企業の違法残業を取り締まる。これまで電通の他、靴専門店のエービーシー・マート、ディスカウントストアのドン・キホーテなどを労働基準法違反の疑いで書類送検した。かとくがマスコミに注目が集まる大企業を狙い打ちにする他、全国各地の労基署は「医師や看護師の過重勤務を是正する」(労働官僚)の方針の下、病院を狙い撃ちにしている。

 近年は採用人数が増えているためか、人材の質の低下が著しい、と指摘されている。国税大学校で1年学ぶ国税専門官と比べ、研修期間も短く、細かい指導もままならないという。監督官が携わった裁量労働の調査データでも問題が多発。バブル期に採用が増えた時は、「バブル官」と揶揄されたが、「今は当時よりも質が落ちている。上も目立つ存在がいなくなっている」(基準局ノンキャリ)との声も。出身大学はキャリア王道の東京大はほぼおらず、明中法や関関同立など有名私大、地方の国立大が主流だ。

 働き方改革関連法案は、政権の最重要法案と位置付けられているが、その実効性を担保する監督官事情は心もとない。

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. インチキな記事だ。裁量労働制のデータは監督官の大量採用が始まる前の平成25年に取られたものなのに、なぜ結びつけているのか。

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