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未来の会

第11回 「2025年問題」と「2040年問題」

第11回 「2025年問題」と「2040年問題」

 「2025年問題」が語られ始めて約10年、その本質を医療介護分野からみると、高齢者人口3600万人(=多死の時代)となり、そのうち70%が老々または独居生活者である。さらに、10人に1人が認知症者である。その結果として増え続ける社会保障費にどう対応するか? 消費税は?(ここからは多分に私見が混じるが、ご容赦願いたい)

 これらに対する救世主と期待されるトップバッターが「地域包括ケアシステム」だ。地域の独自性を保ちつつ、多職種連携の質を高めるというキャッチフレーズで2018年度から本格的な船出となるのだが……。日本医師会は地域医師会の主導を要望するも、現実は程遠い。地域にもよるが、多職種の勉強会に出席する医師はいつも限られた人達だ。リーダーシップをとるというまでには至っていない。その一つの理由として24時間365日対応の縛りがあり、そちらが優先となるためだ。

 もう一つのメインキャストである「地域医療構想」にしても、各論の段階に入ったものの、慢性期病床から在宅への移行のところで暗礁に乗り上げてしまっている。

 その後に登場したのが「医師の働き方改革」で、これが難物だ。「国民皆保険制度」と「フリーアクセス」いう2大命題を大前提として“「医師の健康を守る(労働基準法)”と“応召義務(医師法)”との整合性をどうするか。さらには“自己研鑽”と“宿直”の解釈がポイントだ。このまま何の対策もとらないと、現在の勤務医24万人体制では25%不足となる。しかし、しかし2028年には医師過剰となるのが確実視されており、この矛盾にどう答えるのか。

 ここにきて、さらに日本を揺るがす大問題が「地方消滅」だ。増田寛也・元総務相によると、2040年には896の地方が消滅するという。地域包括ケアシステム、地域医療構想、医師の偏在対策、新専門医制度なども根底から崩れるだろう。

 そういえば、一時語られた省庁の移転や企業の地方進出も全く耳にしなくなったし、逆に東京への一極集中は強まるばかりだ。「一億総活躍社会」(2015年)、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年)など、矢継ぎ早に打ち出されたのはいったい何だったんだろう。

 医療界として協力できることは何か。東京への一極集中は医療界としても同じである。地方の医療の疲弊、救急・周産期医療の崩壊は始まっている。

 もう一つは勤務医の疲弊。開業医中心と言われても仕方がない今の制度の見直しも必要だ。

 最後に6万人の勤務医不足について、時間の制約などで今すぐの増員はほぼ不可能だが、厚労省の医師の働き方改革に関する検討会から「緊急的取り組み」6項目が提案された。罰則付きの実施まで5年しかないが、これらは法改正なしで実行できるものであり、是非とも進めるべきである。

 お金の話で恐縮だが、日本の総予算約98兆円、社会保障に占める医師の総給与約3兆円。日本の社会情勢からみて、社会保障費の積み増しはあり得ない。6万人の医師が増えると、必然的にパイの奪い合いとなり、医師給与も少なくなるのは自明の理だ。

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