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第121回 揺らぎ始めた「安倍一強」の行方に不安の眼差し

第121回 揺らぎ始めた「安倍一強」の行方に不安の眼差し

 学校法人「森友学園」の公文書改ざん問題による安倍政権の体力低下に、霞が関の各省庁は「政策が進まない」と気をもんでいる。働き方改革関連法案を抱え、さらに来秋の消費増税に期待を繋ぐ厚生労働省はその筆頭格だ。

 2018年度予算が成立した3月28日。安倍晋三首相は後半国会に臨むにあたり、「働き方改革国会と申し上げてきた。いろんな事情を抱える皆さんにとって働きやすい日本にしていきたい」と述べ、最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案の成立に強い意欲を示した。

 しかし、労働時間に関する不適切データの発覚という厚労省自身の失態のあおりで、同法案は裁量労働制の対象拡大部分を削除する事態に追い込まれた。直後には財務省による公文書改ざん疑惑が発覚。目標としていた2月の閣議決定は、1カ月以上ずれ込んだ。

 こうした中、野党6党は3月28日、引き続き衆参予算委員会の集中審議や、首相の妻昭恵氏らの証人喚問を求めていくことを確認した。立憲民主党や共産党などは働き方改革関連法案から「高度プロフェッショナル制度」も削除するよう迫っており、同法案が最大の与野党対決の場になるのは必至。自民党幹部は「(6月20日の国会)会期末を延ばしても野党から責められるだけ。審議時間が足りなくなる可能性が出てきた」と話す。

 同法案の行方もさることながら、厚労省幹部が一様に不安に感じているのが、19年10月に予定している消費税増税への道筋が見えにくくなってきたことだ。3月2日の参議院予算委員会。日本維新の会の片山虎之助氏は、過去2回、消費税の10%への引き上げを延期した安倍政権の姿勢をただし、「増税は三度目の正直だ」と畳みかけた。すると首相は「三度目の正直という言葉もあります」と応じ、来秋の増税に関して否定はしなかった。それでも増税嫌いで経済成長を重視するリフレ派の首相の真意について、政官界には「また増税延期ではないか」との観測が絶えない。

 昨年の衆院選で首相は消費増税分の使途変更を争点に掲げつつ、増税には「リーマン・ショックのようなことがない限り」との条件を付けた。「公文書の改ざんで大きく内閣支持率を減らし、財務省の発言力も低下している状況で、増税に踏み込めるのか」。厚労省幹部はそう懸念する。自民党厚労族の一人も、首相が増税分の充当先を社会保障に限っていた3党合意を反故にしたことに触れ、「増税が実現しても社会保障に十分財源が回るのか危ういのに、増税自体を先送りするなら、社会保障は相当の打撃を受ける」と漏らす。

 「誰がなぜ、ということが一切分からない、極めて異例な証人尋問だった」。公文書改ざん問題を受けた3月27日の佐川宣寿・財務省前理財局長の証人喚問後、秋の自民党総裁選で首相の有力対抗馬に浮上してきた石破茂・元幹事長は、そう言って安倍政権に切り込んだ。

 また、29日の自民党石原派の会合では石原伸晃会長が「予算が終わったからふたを閉めた、ということが絶対ないようにしないといけない」と述べ、引き続き疑惑を解明する必要があると強調した。揺らぎ始めた「安倍一強」の行方に、霞が関の官僚達は不安の眼差しを注いでいる。

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