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未来の会

医療・介護分野のAI活用 企業のフロントランナーたち

コーチングAI・・・・・・株式会社エクサウィザーズ
AIを活用して介護の「型」を習得可能に
在宅で手軽に使える仕組みづくりを目指す

 

春田 2013〜2015年の間、前職ではサンフランシスコで仕事に取り組んでおり、ディープラーニング(深層学習)の成果が出始め、熱を帯びるのを目の当たりにし、注目し始めました。これからのテクノロジーの中心になると感じたのです。ちょうど京都大学の医療情報企画部の黒田知宏教授の研究室においてディープラーニングの研究に取り組む古屋俊和さんと出会ったこともあり、2016年2月、一緒に前身のエクサインテリジェンスを設立することになったのです。

──介護分野で事業を始めようとした理由は?

春田 2016年、認知症の介護をAIで解決しようとするデジタルセンセーションの石山洸・取締役COO(最高執行責任者)とも知り合ったことが一つありました。さらに、時を同じくして私自身の祖母に介護が必要になる経験をしたのです。母親が介護に当たり、老老介護を肌感覚として知り、大変さを思い知りました。介護の現場ではやり方についての情報がなく困っている状況があると分かり、まさにそうしたサポートに意味があると理解できたのです。二つの会社に関わるようになり、共にAIと医療と関係し、目指す方向も共通でしたから、2017年10月に経営統合して、新たにエクサウィザーズとして船出することになりました。

──具体的なAIの活用法とは? 

春田 「コーチングAI」という、熟練者の技能をAIが学習し、AIを通じて素人がその技能を習得できるような仕組みを作ろうとしています。教師データとなるのは、デジタルセンセーションが取り組んでいた「ユマニチュード®」です。ユマニチュードはフランスで生まれた認知症の介護ケア技法で、空手や剣道などのように、人を介護するための多数の「型」があります。デジタルセンセーションを設立した坂根裕さんが、ユマニチュード認定インストラクターの資格も取り、本気で取り組んでいたものでした。動画で指導者が行う型と比べながら、その差が分かるようにして、効果的な介護の手法を学びます。例えば、介護される人との目線の合わせ方について、顔をどれくらい近づけるといいかといった細かい指導を行います。先生が少人数を対象に個別で教えていたものをITやAIによってシステム化し、進化させていくのです。遠隔でも対応可能にしたり、自動化まで実現したいと考えています。

──成果は上がっていますか。

春田 実際、静岡大学などと検証すると、成果も出てくると分かりました。エビデンスを蓄積し、それに基づいたものにしたいと考えています。研究開発の段階ですが、今年3月に資本業務提携を発表したSOMPOホールディングスの保有する介護施設で試験を進めており、データを蓄積しているところです。施設でユマニチュードを使える人を増やして、トレーニングの仕組みを確立して、培った仕組みを在宅でも気軽に使えるようにしたいです。

──応用範囲は広がりますか。

春田 介護以外にも使えると分かってきました。例えば、介護で活用できるトレーニングの仕組みは、一般企業の営業などのトレーニングでも使えるのです。言葉で説明しづらい、得手不得手の差のような科学的に分解されたことがないものを、画像化し解明してトレーニングに取り組むところが介護と同じです。その他、医療×AIという領域では、京都大学の奥野先生らが推進する創薬にAIを応用する「LINC」という組織にIT系のメンバーとして参加しています。

──課題は何でしょうか。

春田 AIを使うことで、より良い手法を導き出せますが、得られた回答が実際の現場で受け入れられるかが重要と考えています。AIの応用として注目されてきた囲碁のように勝ち負けだけで割り切れる単純な課題ならいいのですが、介護のようなケースでは、たとえ正しくても、人間から見て奇妙に映ると成り立たないところもあります。確かさを証明しながら時間をかけて普及させていきたいと考えています。


 

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