SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

医療・介護分野のAI活用 企業のフロントランナーたち

オンライン医療システム・・・・・・株式会社情報医療
医療従事者の暗黙知を活用する
データになっていない情報に注目

──AIを医療にどう生かしますか。

 大きな発想として、今まで暗黙知になっていたような医師の技術を学習させ、それを再現していくためにAIを活かしたいと考えています。患者の抱える病を解決する手段として薬や医療機器は汎用性がある一方で、医師の技術である手術や問診などは医師個人に属するもので局所的なものだったのです。医療の世界では、データになっていないものが多く存在します。例えば、医師と患者のやり取り。診察室の中で交わされ、ほとんど記録に残されていません。私達はオンライン診療の事業をしているのですが、それもデータの観点から取り組み始めました。動画や音声など、オンラインで診療を行うと、様々なデータが残っていきます。積み重ねによって、医師がどう介入していくと、より質の高い医療を提供できるのか、患者がいかに病気と付き合っていけるかがもっと分かってくると考えられるのです。

──医療のデータは他にも眠っていそうです。

 最高技術責任者(CTO)を務めている巣籠悠輔も、機械学習の研究に取り組む中で、医療分野のデータ活用に価値を見出したのです。公開データはグーグルやフェイスブックなどにより研究開発が進んでいますが、医療分野のデータはこれまで外に出ることが少なかったので、これから活用が進む大きな分野と言えるでしょう。

──具体的にはどのような価値に繋がりますか。

 画像の領域は先行しています。例えば、私達は国立がん研究センターと一緒に内視鏡手術の動画をAIに学習させています。手術の技術が高い医師による手技を再現できるような仕組みを作ろうと開発を進めています。例えば、臓器のつかみ方や切り方などがあります。手術のうまい人はどのようにやるのか機械に学ばせ、得た情報に基づいてナビゲーションできるようにするのです。従来、指導する医師がその場にいてやり方を教えていましたが、いなくても訓練できるようになります。この他にも経験豊富な医師が持っている患者への服薬指導のコツなどにも対応できると考えています。いわゆる生活習慣病で亡くなる方が多い中で、病気をマネジメントすることが大切ですが、薬を1年間続けられる人が半分程度しかいません。

──他に動きそうな領域は?

 時系列で変化していくデータを分析して、将来を予測するような分野にも注目しています。私自身は起業する前に、医学部を卒業し、研修医として臨床医も経験していますが、医学部の学生や研修医だった時に、例えば、肺がんの患者が、末期には呼吸が苦しくなり、「こんなことなら、たばこなんて吸わなかった」と後悔している声を聞きました。患者が後悔して亡くなっているという課題を解くため、時系列のデータから将来を予測できるようにすれば、リスクへの理解を深められ、たとえ病気になっても現状よりも納得感を持って接することができるようになると思います。そうした臨床現場で感じた問題意識は、事業を始めようと考えた原点でもあります。AIの応用範囲を広げながら、研究機関、大学、企業と共同開発を進めているところです。

──医療におけるAIの課題は何ですか。

 AIが万能とはまだまだ言えません。まずデータが集まっていないところは課題です。画像ならば多くのデータを含みますので、解析の精度を高めやすいのですが、他の分野では情報量が足りません。患者にどう治療するか、診断するかなどでは、検査値とカルテ情報を入れたところで、医師が見ているものと同等というわけにはいきません。精度を高めるためには、データの入力をさらに進める必要があります。

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