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オンライン診療システムと日医ORCAが連携

オンライン診療システムと日医ORCAが連携
従業ィカル事業も

2018年度の診療報酬改定でオンライン診療が保険収載されたことで、その普及が期待される中、株式会社インテグリティ・ヘルスケア(東京都中央区)のオンライン診療システム「YaDoc(ヤードック)」と、日本医師会ORCA管理機構株式会社(東京都文京区)の「日医標準レセプトソフト クラウド版」(略称・クラウド版)が4月からシステム連携した。

 インテグリティ・ヘルスケアの代表取締役会長の武藤真祐氏は医師でもあり、医療法人社団鉄祐会理事長として都内に四つ、宮城県石巻市に一つの診療所を運営、在宅医療を展開している。

 政府が16年の「未来投資戦略2017」で医療ICT(情報通信技術)の利活用を長期戦略に位置付けると、同社は17年4月から福岡市医師会や福岡市、鉄祐会らと共に「ICTを活用した『かかりつけ医』機能強化事業」の実証実験を実施、システムを改善しながらヤードックを開発してきた。ヤードックの提供は今年1月から始めた。

 また、厚生労働省や日本医師会(日医)に対し、実証実験の結果報告を行ったり、その有用性の評価と安全運用について検討したルールを提言したりした。それらの資料は中央社会保険医療協議会でも使われた。

通常診療では捉えにくかった情報を集積

 同社が考えるオンライン診療とは、「ICTを活用し、従来の対面診療を補完することで、患者データの質と量を増やすとともに、医師と患者の双方向コミュニケーションを深め、診療の質を高めていくもの」。具体的には、以下の3点を示す。

 ①医療情報の集積と活用/医師が通常の診療では捉えにくい情報を分析可能にし、医療の質向上を追求

 ②アクセシビリティの向上/通常の医療提供が困難な状況を解決する手段

 ③持続可能な医療の実現/医療資源を最小に抑えながら、アウトカムの最大化を追求

 ヤードックは、患者の日常の状態を捉える「モニタリング」、診察時の主訴を確実に把握するための「オンライン問診」、患者の表情や状態を見ながら診察することができる「オンライン診察」の三つの機能を備えている。患者はスマートフォンやタブレットで自分の医療・健康情報などを記録したり、問診に回答したりする。これらの事前情報をもとに、医師はビデオチャットによる診察が実施できる。ヤードックの導入によって、通常の診療では捉えにくかった情報を集積したり、通院困難な患者の対面診療を補完したり、かかりつけ医の機能を強化したりできる。

 一方、ORCAプロジェクトはスタートから17年がたち、日医標準レセプトソフトは電子カルテなどの医療情報関連のICTシステムと連動したり、地域医療・多職種連携への参画を容易にしたりしている。現在、診療所を中心に約1万7000の医療機関が利用。

 日医は16年に「日医IT化宣言2016」を公表、従来以上に医療分野のIT化に取り組んでいく方針を打ち出し、クラウド版ORCAのサービスを17年秋から始めた。

 連携について、インテグリティ・ヘルスケアの園田愛社長は「医療の本懐を守りながら新しい医療のあり方を創造すること、そして持続可能な医療・社会システムを実現することを目指します」、日本医師会ORCA管理機構の上野智明社長は「これまで必ずしもICT化が進んでいなかった医師会員の皆様にも、安全で安心、そして利便性の高い医療介護ICT環境が提供できることを目指しています」とのコメントをそれぞれ発表した。

 武藤会長は3月28日の説明会で、オンライン診療の保険収載の意義について「入院、外来、在宅に加え、それを補完する形で医師が患者さんにICTを用いて医療を提供する一つの医療の形態が生まれた。歴史に残る改定」と強調した。

医療コストの適正化にも貢献

 ヤードックを開発する上での課題意識として、「必要な医療が必要な人に届かない現実」を挙げた。「患者自身が疾患や症状を理解し、伝え、継続することができなければ、適切な医療を受けることが難しい」ということだ。

 しかし、ヤードックを利用すれば、患者はバイタル(生命徴候)や生活状況、症状などを記録、変化を把握することで疾患の兆候に気づく。患者の入力したデータは、医師が適切な治療を選択する材料の一つとなる。そして、患者は医師とビデオチャットで繋がり、データに基づいた診察を受けられることで、自身の健康状態や疾患に対する理解を深められ、安心して治療を続けられる。

 それによって、受診頻度を高めて治療からの脱落を防ぎ、症状が変化しやすい高齢患者へ安心してケアできると同時に、在宅医の負担を軽減しながら、きめの細かいケアを可能にする。ひいては、医療の質向上と医療の効率化をもたらし、医療コストの適正化にも繋がるという。

 武藤会長は「オンラインとオフライン(対面診療)の組み合わせで新しい医療を組み立てられる」と、今後の展開に対する期待を述べた。

 また、園田社長はヤードックを活用して、健康状況の異なる各層を対象に、正しくリスクを認識し、適切な行動を促す「オンラインメディカルケア」事業を展開していくことを明らかにした。

 「健康」「要注意」層には日々の健康管理への関心を高め、予防行動を促す「オンラインヘルスチェック」、「要注意」「要受診」層には健診結果に対する理解・認知を高め、予防を推進する「オンライン健診フォローアップ」、「要治療」層にはプライバシーに配慮し、より相談しやすい体制を築く「オンライン診療・保健指導」を行う。

 いずれもヘルスデータに基づく医療的なアプローチを行うことで行動変容を促し、重症化を防ぐというもの。

 17年度の経済産業省「健康寿命延伸産業創出推進事業」では、企業の健康診断受診者に対し、ヤードックを通じて受診勧奨を実施、受診者の54%の受診行動に好影響をもたらしたという。

 メディカル・エクセレンス・ジャパンの中国におけるオンライン問診・診療普及促進プロジェクトでも、医師側・患者側双方から前向きな評価を得られたことから、今後、中国での事業展開を考えているという。

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