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未来の会

第119回 医師の働き方改革には「医師の意識改革」も必要

第119回 医師の働き方改革には「医師の意識改革」も必要

 厚生労働省の有識者会議「医師の働き方改革に関する検討会」は、2月中にも医師の負担軽減に向けた緊急対策を打ち出す。その後1年をかけ、抜本的な対策をまとめる。ただ、同省内からは「医師の意識を変える必要があり、簡単ではない」との懸念が漏れる。

 安倍晋三政権が今国会での成立を目指す働き方改革法案は、残業時間に上限を設けることが柱。原則「年間720時間、単月で100時間未満、複数月平均80時間」とする案だ。ただし、医師などは「業務が特殊」として規制の適用を5年猶予されることになった。

 とはいえ、総務省の調査では勤務医の4割超は週の労働時間が60時間以上。残業が過労死ラインの月80時間以上になる計算だ。1月には日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)が、勤務医の残業時間を月200時間まで容認する労使協定を結んでいることも明るみに出た。

 1月15日の同検討会で、厚労省は緊急対策の骨子案を公表した。①検査、入院の説明や静脈からの採血などは医師以外が担うことを推進②医療機関は出退勤時間を正確に把握③当直明けの医師の退勤時刻の設定──の他、主治医を複数にする案なども紹介した。いずれも法改正が不要で、早期の導入が可能だ。①の「医師以外」は主に、医師の判断がなくとも一定の診療の補助(特定行為)が出来る、「特定行為研修」を受けた看護師を想定している。ただ、厚労省は研修を受けた看護師を10万人以上養成する方針にもかかわらず、現状は600人弱にとどまっている。

 医師が一人で仕事を抱える背景には、「専門性」への強い自負や、自らを「労働者」と捉えていない人が少なくないことがある。厚労省の有識者会議でも、「医師は労働者」と指摘する連合の代表に対し、医師側からは異を唱える声が相次いだ。昨年9月の検討会では、「勤務医に病院開設者のために働くという意識はない。地域住民のためだ」と食い下がる病院長に、座長の岩村正彦・東京大学大学院法学政治学研究科教授が「勤務医が労働基準法上の労働者という結論は動かない」と諭す場面もあった。

 こうした状況を踏まえ、厚労省は1月15日の検討会で、「医師の労働時間を出来るだけ短くする」ことを前提に議論を進めるよう求め、医療機関の役割、診療科ごとに時間外労働の上限時間を設定する方向性を示した。週の平均労働時間が長い救急科(63時間54分)、外科系(59時間28分)などで長時間労働となる原因を探り、診療科ごとに適正な上限時間を設定することも視野に入れている。医師は求められた診療を拒めないことを定めた、医師法の見直しも課題となる。

 しかし、医師の大幅増員が難しい中、厚労省幹部は「『医師不足を招かない』のと『勤務医の負担軽減』をどうバランスさせるかが難しい」と打ち明ける。医師の労働時間を減らすだけでは、急患などに対応出来なくなりかねない。また、論文執筆など「自己研鑽時間」のうち、何が「労働」に当てはまるのかも示す意向だが、「関係者間で共通認識がない」(骨子案)のが現状だ

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