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専門医制度に早くも暗雲「医師の偏在」は解消されず

専門医制度に早くも暗雲「医師の偏在」は解消されず
専門医制度に早くも暗雲
 「医師の偏在」は解消されず

 来年度から始められる新専門医制度で、早くも地域偏在が顕在化している。各学会がバラバラに認定してきた「専門医」を第三者が認定し、質の高い医師を育成するという目的で導入されたはずなのに、議論の過程で「地域偏在を解消する」ことも目的に付け加えられた同制度。ところが、地域偏在を解消どころか助長しかねない状況に、現場からは怒りの声が上がっている。

 「日本専門医機構がHPに出した新専門医制度の一次登録の結果を見て驚きました。全科で専攻医の地域偏在が起きていて、しかも内科や外科といった基幹の科の登録者が少なかったのです」と憤るのは、〝医師不足〟の地として有名な埼玉県の内科医だ。もちろん示されたのは一次登録の採用数であり、今後調整が図られる可能性もあるが、「東京だけが1756人と2番目に多い大阪の3倍近い専攻医を集める一極集中ぶりが大きく変わることはないだろう」と内科医は言う。

 別の医師が指摘するのは診療科による差異だ。「仙台厚生病院の医師が、2014年度の各診療科の3〜5年目の医師数と一次登録者を比較した結果が話題になった。内科医の専攻医が減り、麻酔科や眼科、精神科などが増加していたんです」。さらに、もっとも多くの専攻医を集めた内科を地域別に見ると、高知県で5人、宮崎県で9人とあまりにも少ない県があったのである。

 「医師は大学や研修医時代にいた場所に定着するとされており、その意味でも専門医を取得した場所でその後も勤務する可能性は高い。つまり、専門医制度は地域の医師不足の切り札になると考えられていた。今は最終的な専攻医の内訳が出るのを注視している」(埼玉県の医師)。

 制度に踊らされるのは地域にとどまらず、当事者の医師の卵達であることを忘れてはならない。

医師の働き方に労基署がメス
狙うは病院の集約化?

 全国の病院で、医師の時間外労働を巡って労働基準監督署の是正勧告や指導を受ける例が相次いでいる。これまで曖昧だった医師の当直や日直、残業時間などに対して、これまでの「常識」が通用しなくなってきた。

 全国紙記者が解説する。「そもそも労働基準法が認める当直や日直は、ほとんど仕事をしないことが条件。普段と同じように働いたとしたら、それは通常勤務か時間外労働となる。例えば、朝から翌朝まで普段通りに働いた場合、それを当直とすることは出来ないのです」

 診療科によってはほとんど仕事をせず、いるだけで良いという当直もあるかもしれないが、一般的な病院の当直はそういうわけにいかないだろう。そうなると、夜間の勤務などはあくまで「時間外労働」となり、割り増し賃金を支払わなければならない。現在の一般的な医師の働き方では、残業時間があっという間に法定上限を超えてしまう。「法律を守るには診療時間を減らすなど業務を大幅に見直すか、医師の数を増やすしかない。病院の経営者にとってはどちらも難しいだろうが、これも時代の流れだ」(労働問題に詳しい弁護士)。

 高齢化が進み、急性期の医療から在宅医療が重視される中、労働者としての医師と法律を守りつつ、かつ地域の医療を守るには、「病院の集約化、機能分化などを進めるしかない」と全国紙記者はみる。

 厚生労働省の医政局がどれだけ知恵を絞っても、医師や診療科の偏在を解消するのは難しかった。しかし、「意外にも、旧労働省が医療現場を劇的に変えるかもしれない」と厚労省幹部は苦笑いしているという。

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