全室個室・省エネ・災害強化を実現
172 足利赤十字病院(栃木県足利市)
古くは足尾銅山鉱毒事件、近年では森高千里さんのヒット曲「渡良瀬橋」で知られる渡良瀬川。その清流を前に、緑の山並みを背に立つのが足利赤十字病院である。駐車場には風力発電の風車、玄関前には太陽光発電の大型パネルを設置、クリーンエネルギーを重視している。
同病院は1949年、足利市の市街地に開院した。その後、増改築を繰り返した結果、設備を整えていくのが困難になるとともに、建物自体も老朽化。そこで、2006年度から施設整備事業をスタート、11年に新築移転した。長年にわたり、市民病院的役割を果たしてきたことで、経営状態は良く、移転に際しては公的な資金援助を受けなかった。土地も足利競馬場の跡地5万7000m²を市から無償で借りられた。
新病院の特徴として、小松本悟院長は①快適な療養環境を提供する病院②成長と変化に対応出来る病院③自然に優しい病院④災害に強い病院⑤地域に開かれた病院の五つを挙げる。
①では555床の全病床が全室個室。小松本院長の強い主張で実現したもので、多床室で発生する感染、臭い、プライバシーなどの問題を解決するとともに、病床稼働率も100%近くに向上した。②では病棟を中心に将来の改修や増築が見込まれる中央診療棟や外来棟を分棟型に配置した。③は年間を通じて19°Cである豊富な地下水を活用し、ヒートポンプシステムによる冷暖房と給湯設備を整備。以前よりエネルギー量を55%削減(年3億5000万円削減)した。④は中央診療棟、外来棟、病棟を157基の免震装置で支え、東日本大震災でも大きな揺れは感じられなかった。2回線受電により、断線しても予備線からのスムーズな受電も可能で、何事もなかったように手術などを続けられる。⑤では病院敷地と周囲を取り囲む公園(3万m²)の境に塀を設けていないため、散歩などをする患者や家族、地域住民が双方を気軽に行き来することが出来る。
これらの特徴により、同病院はJCI(医療施設の国際的認証機関)の認証を取得、また省エネ大賞の経済産業大臣賞、医療福祉建築賞、カーボンニュートラル大賞などを受賞している。小松本院長は「この病院を中心に、生まれてから死ぬまで完結するような医療モール構想を持っている。行政と協力して、そのような街づくりが出来れば」と語る。
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