外科志望の研修医・学生が少なくなっているそうだ。多くの大学の外科医局で入局希望者が激減しており、関連病院の維持が困難で撤退が相次いでいる。
いつ頃からだろうか、世の中では外科は“3K”らしい。①きつい②汚い③かっこ悪い。それぞれに反論したいところだが、特に③に関しては腹立たしい限りだ。これに腹を立てているのは、“元外科医”である私が真逆のことを信じ切っているから。つまり、「外科医はかっこ良い」。
この原点は、故山崎豊子氏原作の『白い巨塔』である。実際に鋭く外科医、外科医局というものを描写している。故田宮二郎氏が主演した同名映画やTVドラマが今も再放送されており、私も時間が合えば必ず観ている。唐沢寿明氏がリメイク版で主演したが、田宮氏の鬼気迫る演技とアクの強さにはとても及ばない。
当時は「外科医にあらずんば医者にあらず」と公然と語られていたし、実際、外科医局には10人以上入局していた。
ある時、私が医局の2年生だった頃に可愛がってくれた先輩が開業医である父親の急逝で急きょ退局し、長野へ戻ることになった。その送別会で、一講師(人格者で有名、学生からの人気も抜群)が「〇〇君はいい開業医になる。外科は専門だし、当然内科も出来る」とスピーチした。ここがポイントである。自分もそれが刷り込まれていて、自信満々、肩で風を切って歩いていた。
ところが、自分が独立して内科患者を診てみると、(注)「何も出来ない元外科医」ではないかと考えるようになった(元ベ平連代表の故小田実氏が名著『何でも見てやろう』の中で「英語教師であるが故に英語はしゃべれない」と言っているくだりを思い出した)。こう書くと、日本中の心ある元外科医達から、ある種の共感と同情を得ることが出来るだろう。また、大ブーイングも覚悟の上である。当時も(今も)外科医のアルバイト先は救急病院の当直である。そこは現在の二次・三次救急の複合体だ。経験を積んでくると何でも出来ると思い込んでしまう。
ところが、内科的疾患でも、一発勝負的な喘息重積発作、急性腹症、感染症などは得意だが、慢性疾患(糖尿病、高血圧、腎臓病など)に対して薬を微調整しながらきめ細かく説明することは大の苦手ということが判明。薄っぺらい自信は音を立てて崩れていった。今何とかこなしているのは、年の功だろう。
外科医について“自分なりの大規模調査”を行い、興味深い結果が得られたので報告する。
①他診療科医師(この場合、精神科)
・外科医はすぐに肩を組んで歌いだす。
・依頼のあった脳波の結果を説明しても、ほとんど聞いていない。
②大学同窓の薬剤師で元大手製薬会社役員
・外科の先生は勉強しないからなぁ……。
・薬の説明よりも、お酒やスポーツの話をしたがる。
③中年以上の一般女性
・頼もしくてかっこいい
(注) 私見だが、外科は一般的に内科に近く、同じ外科系とされている整形外科は苦手の人が多い。外科系休日診療所の患者の90%以上は整形外科領域とされる。必然的に元外科医は内科疾患を診ることが多い。
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