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薬価算定プロセスは「ブラックボックス」

薬価算定プロセスは「ブラックボックス」
織」はメバー非公表、

野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」で浮上した高額薬価問題。患者1人当たり年間約3500万円、米国の約2.5倍、英国の約5倍の薬価が政治問題化し、一気に50%引き下げられた。当然、製薬業界は反発したが、政府は昨年末、薬価の中間年改定、適応拡大などで販売量が急増した医薬品の年4回の薬価見直しなどを盛り込んだ基本方針を決定。今年12月には薬価制度の抜本改革の骨子がまとまる。医療費総額に占める薬剤費の割合は、2001年以降、約3割と海外と比較しても高い水準にある。中でも、品目シェアで約3割の新薬が金額シェアで6割近くを占め、薬剤費を膨張させている。新薬の高薬価構造の是正が急務なわけだ。

 しかし、新薬の薬価算定プロセスは、「ブラックボックス」となっている。新薬の薬価は、厚生労働省が作成した算定原案を、同省に設置された「薬価算定組織」(委員長=清野精彦・日本医科大学千葉北総病院院長)で検討するなどして算定案を策定した上で、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承を得る流れになっているが、策定過程が非公開とされているからだ。製薬企業からすれば、「原価情報は企業秘密なので一般には公開出来ない」ということだ。

 これに対し、全国保険医団体連合会(保団連)で医療政策を担当している松山洋・事務局主幹は「新薬の価値評価の根拠が曖昧のまま、様々な補正加算が折り込まれるため、厚労省や製薬企業の裁量的判断が介在する余地が大きい」と指摘。さらに、「清野委員長以外の薬価算定組織のメンバーは非公表で、議事録も作られていない。中医協総会にも、検討結果のまとめなどが示されるだけで、詰めた議論がなかなか出来ない。これでは事後に検証をすることも出来ない」と話し、薬価算定組織などで議論された内容や資料の原則開示・公表を求めている。

 新薬の薬価は類似薬効比較方式で算定、類似の先行新薬がない場合、原価計算方式で算定する。同方式は製造原価に営業利益や流通経費などを加えるのだが、「薬価の大本を構成する製品総原価における原材料費や研究開発費などの内訳が公開されず、算定根拠も不明瞭。販売予測と販売実績の乖離が大きくなるケースが散見され、厚労省でも原価の把握が適正になされているとは言い難い。製薬業界の非常に高い営業利益率がベンチマークとして算定された上、最大100%の営業利益への加算が認められている」と指摘する。

 また、新薬創出加算によって、後発薬が販売されるまでの間(最長15年間)、当初の算定薬価が維持されたり、「希少疾患で参入し高薬価を得た後、適応の大きい疾患に拡大して売り上げを伸ばす」製薬企業の手法が是認されたり、外国平均価格調整で米英独仏の薬価が薬局マージン除去などの補正なしで参照された結果、大手製薬企業は巨額の内部留保を持つに至った。薬価制度に関しては課題が山積みだ。

 医薬品の承認審査などを行っている医薬品医療機器総合機構(PMDA)の薬価算定への関与の有無も不信視されている。オプジーボの薬価算定に関わったPMDAの担当者が「日本発の新薬だから応援したい」と述べたと一部メディアが報道。また、新薬の薬事審査は、製薬企業がPMDAに相談した段階から、PMDAと製薬企業との折衝で進められるが、保団連の住江憲勇会長は「PMDA予算の約80%は製薬企業からの拠出金や手数料で賄われている。その公平性や中立性も検証されるべき」と話す。

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