ドイツの概要
ドイツは面積が35.7万km²(日本の約94%)、人口8052万人(2012年)、人口密度は1㎞²当たり約230人(独連邦統計庁)の国で、首都ベルリンの人口は約343万人(12年、連邦統計庁)。宗教はキリスト教(カトリック2546万人、プロテスタント2483万人)、ユダヤ教(11万人)(12年、連邦統計庁)など。外務省によれば、在留邦人数3万8740人(12年)である。
医療保険は、労使折半の保険料による公的保険制度をとっている。住民側から見れば、高所得者に対しての例外措置を除くと、日本とほぼ同様の制度をとっているようにみえる。
しかし、日本と比べると、①保険が高齢者まで突き抜け方式になっている②医療者や病院への支払い方式が異なる。特に医療者については保険医協会を通して個々の開業医に支払われ、日本とはかなり異なる仕組みになっている③民間医療保険や株式会社病院など民間の役割が大きい点④特定の計画区域に対して、専門医ごとに人口当たりの医師数の基準を決めている──などの相違点がみられる。
医療保険制度
14年の平均寿命は80.84歳、医療費は13年の経済協力開発機構(OECD)の統計によれば、国内総生産(GDP)の11.0%で、OECD平均の8.9%よりかなり高い。しかし、近年の医療費抑制策で、あまり増加しておらず、横ばいであったり、減少したりしている。
医療に対するアクセスは、ヨーロッパ内では良好であり、外来受診の頻度は、他のヨーロッパの国より多くなっている。
ドイツには、疾病金庫を保険者とする公的医療保険制度があり、国民の約9割が加入している。一方、国民皆保険であるが、収入が一定水準を上回っていたり、公務員であったりするなど、一定の要件を満たしている者は、公的医療保険への加入義務がなく、民間医療保険会社が提供する医療保険に加入することが出来る。
ドイツの疾病金庫が日本の健康保険組合と異なる点は、加入者の疾病金庫に対する選択権である。これは、1993 年の疾病保険構造法(GSG)により、被保険者の疾病金庫選択が自由化されたことで始まる。
GSGは「連帯下の競争」の基本理念導入、医療費・保険医数のコントロール、被保険者による疾病金庫選択の自由度向上、リスク構造調整、疾病金庫の管理運営体制の強化を目指した。その後、疾病金庫は加入者サービスの強化、IT 化や合併統合によるコスト削減などによって他金庫との差別化を図り、競争を促すものであった。
ドイツで開業医に対する診療報酬の配分を行っている保険医協会は、医師の自治の仕組みである。日本的に考えれば、疾病金庫というものが保険者であるから、医療保険の支払いに厳しく介入をするのではないかと考えるか、必ずしもそうではなく、むしろ公法人である保険医協会の方が医師の医療行為を監査し、報酬を決定しているという仕組みなのである。
ドイツの医療提供の中には、動物や自然を使った療法があるので、以下に紹介しよう。
ホースセラピー
今回は、ハイデルベルグ近郊でホースセラピーを見学した。ホースセラピーは公的保険適用ではないが、ドイツにおいては比較的メジャーな治療で、何カ所か治療施設があるという。
成人を対象としたこの治療法には、ヨーロッパの歴史における人間と馬との関係性が背景にあると思われる。特徴として下記のようなものが挙げられる。
●人間の心的・精神的・身体的な発達に、馬が働き掛ける治癒的な力があるのではないか。
●馬は人間に対して強い関係を構築出来るのではないか。
治療に使う馬の特徴としては、
●いつも人間にケアされ、かまってもらいたいという欲求を持っている。
●身体は大きく力もあるが、人間に服従しようとする特性がある。
●非常に研ぎ澄まされた感知能力を有し、葛藤が生じる場合は人間との一体化が可能である。
●素早いフィードバックが可能である。
●執念深くなく、いつまでも根に持つことをしない。
対象となる疾患は下記の通りである。
●鬱病などによる無気力
●摂食障害などの身体的な障害
●知覚・感知力などの障害
●人格障害
●不安による障害
●脅迫障害
●精神的外傷による精神的負担
●慢性の病気
●がんを患った後のアフターケア
一方、子供に対する治療も可能である。子供はホースセラピーを受けている間、自分が治療されているという事実を全く感じない。なぜなら、子供は単に馬と一緒にいるのが楽しく、そしていい気分でいられるからである。
対象の疾患は下記の通りである。
●知覚・感知の障害
●(脳により制御される)運動能力障害
●注意力の欠如・ADHD(attention deficit hyper-activity disorder)
●自閉症
●言語及び錯語障害
●うつ病、不安症、精神的外傷
●摂食障害、脅迫神経症
●慢性の病気、がんのアフターケア
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