医療教育の効率化や遠隔医療の普及に期待
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)がゲームだけでなく、医療や教育、製造など幅広い分野で活用されようとしている。
8月5日に都内で開かれた脊椎脊髄疾患に関するフォーラム「Summer Forum for Practical Spinal Surgery 2017」(会長=高野裕一・岩井整形外科内科病院院長)では、米マイクロソフト(MS)のMRデバイス「HoLoLens(ホロレンズ)」を使った日本初の手術トレーニングのデモンストレーションが行われた。
脊椎内視鏡手術数でトップクラスを誇る稲波脊椎・関節病院(東京・品川区)の金子剛士・IT戦略室長(整形外科医)が発案し、ホロレンズのアプリケーションを開発しているホロラボ社(東京・品川区)の中村薫・最高経営責任者(CEO)の協力で実現した。
ホロレンズは、頭に装着してワイヤレスで使えるヘッドマウントディスプレー(HMD)という端末。サングラスのような透明レンズ部分にホログラムによる3D映像を表示し、目の前の現実空間に仮想空間を重ね合わせて映し出す「複合現実(MR=Mixed Reality)」を実現する。
同日は、ホロレンズのシェアリング機能とスカイプ(MSが提供するインターネット電話サービス)を用いて、現実空間に3Dの模擬骨を表示させ、複数の医師で共有した。
ホロレンズはOSやバッテリー、通信機能を内蔵しているので、歩き回りながら使える。模擬骨の周りを回ってサイズや細部を感じ取れたり、模擬骨に入り込めば内部を見ることも出来たりする。模擬骨の数カ所にピンが表示されており、ジェスチャーや視線、音声で操作すれば、重要事項が表示されたり、音声が流れたりする。
また、ホロレンズを通信で繋げば、離れた場所にいても、同じ3D画像を囲んで打ち合わせをしたり、手術のトレーニングが出来たりする。
金子氏は「時間と空間の壁を越え、10年かかる手技の習得が1年で学べる可能性がある。教育の効率化に役立つ」とホロレンズの活用に期待する。
また、中村氏は「ホロレンズを装着している人の視点も相手に分かるので、ベテラン医師が若手医師を指導しやすい。医療安全の向上や遠隔医療の普及にも一役買える」と話す。
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