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第90回 タミフルで発達障害の後遺症

第90回 タミフルで発達障害の後遺症

 7月19日、タミフルによる副作用被害を棄却した医薬品医療機器総合機構(PMDA)の判定の取り消しを求めた3件について、東京高等裁判所の判決が予定されている。1人は、10か月齢までは正常な発達をしていた女児が、タミフル服用後に無呼吸となり、呼吸停止・心停止して低酸素による痙攣が生じた後、いったん回復したように見えたものの、3日後から急激に発達の退行を認め、重度の後遺障害を生じた。本稿が出版される頃には、判決は出ていると思われる。

症例11):生後10か月齢の女児。心身ともに正常発達中。発熱2日後38.6℃の発熱で再受診時にインフルエンザと診断され、タミフル18mg(1日2回)が処方された。初回のタミフルを服用した50分後、様子がおかしいと、母親が気付き、背中から降ろして座らせようとしたが、全身の力が抜け1人では座れず、崩れ落ち、意識消失。唇は紫色で歪んでいた。1時間15分後に再受診した時には間代性痙攣があったが、ジアゼパム坐剤4mg挿肛10分後に痙攣は止まり、約1.5時間後、一応、意識清明。神経学的には異常無しとして帰宅。その後は何も服用することなく、解熱・回復した。 

 3〜4日後、下肢を使わず両足を引きずり、匍匐前進をしないことに母親が気付いた。出来ていた掴まり立ちをしなくなった。正常であった心身の発達が、このイベントの直後から急激に退行し、それ以降、発達は極めて緩徐となり、5歳時から15歳の現在までほぼ全面的に介護や介助を要する状態が続いている。

 タミフル服用後に心肺停止後の後遺症2例が報告されている。全身虚血後の生存例では、脳死や無酸素後ミオクローヌス、遅発性低酸素性脳症など、様々な神経障害を残し得る。本例は、オセルタミビルにより呼吸抑制・心肺停止後、遅発性神経細胞死による遅発性低酸素脳症と考えることが順当である。 

Dravet氏は国側証人の診断「Dravet症候群」を否定

 被告側証人の水口医師(東大教授、小児科医)が、この被害者の症状を「ドラベ症候群=乳児重症ミオクロニーてんかん」ないし、その周辺症状と診断したため、一審判決は、水口氏の意見通りとなり、タミフルは無関係とされた。あまりにも唐突で、全く根拠の無い診断なので、「ドラベ症候群」を発見したCharlotte Dravet医師に直接意見を求めた。Dravet医師は「私は、ドラベ症候群とは思いません。彼女の真正てんかん発作は、タミフル服用後だけです。ドラベ症候群では、痙攣発作の頻度が高く、長時間持続し、様々な型が生じます。最初は発熱が契機ですが、無熱時にも生じ、重積持続状態に進展し、薬物を必要としますが、ほとんど薬物では抑えることが出来ません。ドラベ症候群の患者は、発達が緩慢になりますが、その兆候は第1回目の発作の後ではなく、もっと後、つまり生後2年目ないし3年目から始まります。この女児のような第1回目の痙攣発作の後に、急速かつ連続して退行が生じることはありません。運動機能障害は、運動失調が特徴的であり、不全対麻痺の形は取りません。ドラベ症候群では、注意力欠如、過活動性、反抗的態度など問題行動が生じます」と述べた。

東京高裁判決に注目を

 東京高裁は、これでもタミフルとの関連を認めないのか、あくまで「ドラベ症候群」とするのか。いよいよ、司法の独立性が問われることになる。

 7月19日の判決に注目して頂きたい。


参考文献
1)  Hama  R. I J Risk Safety Med 2008;20(1-2), pp. 5-36
http://www.npojip.org/sokuho/published-paperJRS431.pdf

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