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未来の会

第87回 肺炎球菌ワクチンは高齢者に害

はじめに
 日本では、2014年6月、13価肺炎球菌結合型ワクチン「プレベナー13」の65歳以上への適応が追加承認された。その後、2015年3月に65歳以上の約84,500人を対象にした13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)のランダム化二重遮蔽比較試験1)が公表された。対照群には、アルミニウムアジュバント液が用いられている。この適応の是非について、薬のチェックTIPで、有害事象の検討を含めた評価を行った2)。その結果の概略を紹介する。

プレベナー13について

 プレベナー13は、変異ジフテリア毒素を肺炎球菌莢膜多糖体に結合させている結合型ワクチンであり、その上、アラムアジュバントとしてリン酸アルミニウム125μgが添加されている。そのため、肺炎球菌莢膜多糖体のみを有効成分とするニューモバックス(DNAやRNAが不純物として混じる)とは異なり、「プレベナー13では、免疫記憶が確立される」、つまり、免疫のでき方が強い、と考えられている。

65歳以上を対象としたランダム化比較試験

  高齢者に対するPC13ワクチンの効力を調べるためのランダム化比較試験(CAPiTA試験1は、二重遮蔽方式で、接種時65歳以上(平均年齢73歳)84,496人を対象にオランダで実施された。3.5%は85歳以上であった。

 対照群は、生理食塩液ではなくリン酸アルミニウムアジュバント(アラムアジュバント)を含む溶液が用いられた。これを著者らはプラセボと称している。プラセボとは本来、生体に対し良否に関わらず影響を与えるものであってはならないので、これはプラセボ群ではない。

 ワクチン接種から平均4年間で、ワクチン型の肺炎球菌性肺炎は有意に減少したが、利益はわずかであり、約1,000人に1人を予防するにすぎなかった。市中肺炎全体の罹患率の減少は認められず、肺炎球菌性肺炎による死亡、ワクチン型肺炎球菌性肺炎による死亡も、総死亡率全体も減少しなかった。またワクチン型の菌は弱毒性であることが推察された。

腕の動きに障害が9人に1人

 CAPiTA 試験での有害事象は、免疫学的な検査が24 か月間にわたり実施された各群約1,000 人について、1週間以内、1か月以内、6か月までが報告されただけである。また、対照群は生理食塩液ではなく、アラムアジュバントを含む溶液であるので、対照群の有害事象自体が過大であり、ワクチンの害が過小評価されることに注意が必要である。

 このような条件であるが、有害事象は対照のアジュバント液に比較して、発熱、倦怠感、局所腫脹がワクチン群で有意に多かった。中でも、9人に1人に、腕の動きの障害がワクチンによって生じていた。接種後半年以内には、慢性疾患が対照群よりも多い傾向にあったが、対照には生理食塩液が使用されていないので、適切な評価は不可能で、さらに長期にみると害が大きい可能性がある。効果に比較して、害の方が大きいと考えるべきであろう。

実地診療では

 肺炎球菌ワクチンは、65歳以上への接種の利点はなく、安全性未確認のため、接種してはならない。


参考文献
1) P Bonten MJM et al. 
  N Engl J Med 2015 ;372(12):1114-25.
2) 薬のチェックTIP.2017:17(70):28-31

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