都心で働く女性達の「駆け込み寺」
163 広尾レディース(東京都渋谷区)
健康に不安を持ちながら社会で活動する女性達の“駆け込み寺”が東京・恵比寿にある。「女性の健康をココロとカラダの両面から専門医がサポートします」をキャッチフレーズに2012年に開業した広尾レディースだ。JRと地下鉄が乗り入れる恵比寿駅東口前のビルの中と、気軽に受診できる立地に構える。
宗田聡院長は筑波大学などで周産期を専門に取り組み、胎児の出生前診断や胎児治療なども手掛けてきた。海外留学や総合病院勤務といった経験を積む中で募った思いは「一般的な領域と専門的な領域の両方を扱いたい」ということだった。頭が痛い、腹痛がするといった、直接には周産期に関わらない症状でも受け入れる。「総合診療医や家庭医のような存在を都会で実現したいと思い、開業しました」。
院内のレイアウトにも宗田院長のこだわりが表れている。まず、都心のクリニックでは珍しく、待合スペースの窓を広く取った。外光の中でリラックスして待ってもらうとともに、位置も受付とは離して設定し、受付時の会話から生じかねない個人情報漏洩の問題の解消を図った。この待合スペースをはじめに院内には宗田院長が長く親交を続ける女性フォトジャーナリスト、安田菜津紀さんの作品=カンボジアを中心に貧困や難民の問題を訴える子供達の写真が飾られているのも特徴的だ。
診療で重視するのが、女性のライフサイクル。月経前症候群(PMS)や産後のうつ症状などへの対応はもちろんだが、人生の節目節目で体調が悪くなる女性に対し、必ずしも投薬に頼らない治療を行うかかりつけ医を目指している。もちろん頭痛や腹痛など薬で解決できそうな症状には薬を処方し、がんが見つかった場合などは、それぞれの専門病院を紹介している。
また、インターネットなどを通じて間違った知識を持つ人が増える中、宗田院長は著書を出版したり、大学や助産師会などで講演をしたりするなど啓発活動も積極的に行っている。
「薬は一時しのぎにすぎません。女性の病気には前段階があり、食事や生活などライフスタイルを変えるだけで不調が治るケースも多くあります。病気になることを防ぐ、病気になるスピードをゆっくりするという意味で、未病の段階から関わっていきたい」と今後の目標を語った。
LEAVE A REPLY