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未来の会

在宅医療を「高齢医師」が支える実態

やすい評価や   が求めら
域包括ケアシステムでは、「かかりつけ医」と在宅医療を中心とした体制づくりが重要になる。しかし、全国保険医団体連合会(保団連)がこのほど公表した「開業医の実態・意識基礎調査」では、在宅医療を支えている高齢医師の存在など、地域で奮闘する医師の姿が浮き彫りになり、医師が在宅医療に取り組みやすい制度構築の必要性などが課題に上がった。

 保団連は同調査を3〜4年ごとに行っており、今回は2016年9月に無作為抽出した医科歯科合計8634人の開業医会員を対象に実施。有効回答数は2781人(医科1517人、歯科1264人)。年齢分布は、医科では「60歳代」が最も多く35.1%、次いで「50歳代」が31.8%。歯科は「50歳代」が35%で最も多く、次いで「60歳代」と「40歳代」が26.4%、26.2%とほぼ並んだ。00年調査からの推移を見ると、医科・歯科ともに高齢化が進みつつあるという。

 1日当たりの診療患者数は、医科で最も多かった「40〜60人未満」が29.1%、次いで「20〜40人未満」が26.1%。歯科では「20〜30人未満」が最も多く26.3%。次いで「15〜20人未満」が19.9%だった。00年調査と比べると、医科・歯科とも外来患者数は減少傾向にある。保団連は「患者負担の増加、処方日数の長期化など様々な背景が考えられる」と話す。

 1日の労働時間は、医科・歯科とも「7〜9時間未満」が最も多く、それぞれ38.0%、41.1%で、次いで「9〜11時間未満」が27.8%、29.0%だった。04年調査からの推移を見ると、医科・歯科とも1日の実労働時間が長くなる傾向があり、1週間当たりの休日日数は医科・歯科とも「1日未満」が1割以上いた。

使命感・やりがいを持って臨む医師達

 医科の在宅医療(訪問診療)については、「取り組んでいる」と答えた医師が36.7%。一方、「現在は取り組んでいない」が25.8%あり、「全く取り組んだことはない」も30.5%に上った。また、取り組んでいる医師のうち、「今次改定を踏まえて撤退を考えている」が3.2%あったのに対し、「これから取り組むことを考えている」は3.0%にとどまった。保団連では「診療報酬制度改定の都度、在宅の報酬評価、算定案件などが目まぐるしく変更されることなどの影響では」と指摘する。

 また、「取り組んでいる」医師を年齢別で見ると、30歳代から60歳代にかけて4割を超えている。70歳代でも35.5%、80歳以上でも20.5%が取り組んでいる実態が分かった。神戸市で開業している武村義人・保団連副会長は「私は65歳だが、近くに新規開業がない。使命感・やりがいということになるのだろうが、私がここにいなければどうなるのだろうと考えると、辞めるに辞められない」と話す。

 保団連も「高齢医師が5〜10年後にリタイアすることを考えると、診療所が在宅医療に新規参入しやすい環境整備が急務」と述べる。具体的には、在宅療養支援診療所(在支診)だけでなく、在宅医療を行う診療所に対して広く評価したり、24時間の往診体制・連絡体制などの負担を軽減したりする政策が求められる。

 患者は減る、労働時間は伸びるという状況でも開業医を支えているのは、使命感とやりがいだ。医科は「医師への道を選んだ時と変わらない」が最も多い49.6%で、「段々、使命感、やりがいが失われていく」の29.7%に差を付けた。歯科では「段々、使命感、やりがいが失われていく」(35.6%)と「歯科医師への道を選んだ時と変わらない」(35.1%)がほぼ並んだ。08年調査からの推移で見ると、全体的に改善の傾向が見られ、保団連は「14年度・16年度の診療報酬改定率が不十分ながらプラスとなったり、地域包括ケアの推進が促され、全人的な医療がクローズアップされたりしたことが背景にあるのでは」と分析する。

 では、その足元を支える医院経営の見通しについてはどうだろうか。「不安はない」「不安はあるが見通しは立つ」が医科では72.1%だったが、歯科では58.4%と大きく差が開いた。先行き不安の感情が歯科では4割近く見られ、歯科医院経営の厳しさが窺えた。

 16年度の診療報酬改定以降の請求額について、医科は「変わらない」が最も多く45.4%、次いで「多少のマイナス」が32.4%、「分からない」が10.9%と、12年調査とほぼ同じ傾向だった。歯科も「変わらない」が最も多く51.2%、次いで「多少のマイナス」が17.9%、「多少のプラス」が13.4%と続く。12年調査と比べると、「変わらない」が12.4ポイント減少し、「多少のマイナス」「大きなマイナス」の合計が11.5%から20.8%へと9.3ポイント増えた。

 診療報酬に関する審査(基金、国保)については、医科では半数近くが「問題がある」とした。「審査基準が不明確」「査定・減点の増加」「医学的判断による見解の相違」の声が多く、医科・歯科ともに「減点の理由を具体的に明記してほしい」との声が強かった。

 個別指導では、技官の態度に改善が見られつつも、依然、内容全体について半数以上で納得感を得られていなかった。録音、弁護士の帯同は少しずつ増えてきている。

 また、公的医療保険を賄う財源確保のために「どの負担を増やすべきか」を聞いたところ、医科・歯科ともに「大企業の法人税」が最も多く、医科で44.0%、歯科で50.2%だった。次いで、医科・歯科ともに「消費税」(医科40.1%、歯科31.4%)、「富裕層の所得税」(医科22.6%、歯科29.9%)、が続いた。12年調査と比べ、医科・歯科ともに上位三つの組み合わせは同じだが、医科・歯科ともに「大企業の法人税」が微増し、「富裕層の所得税」が約10ポイント減少する一方、「消費税」が約6ポイント増えて2番目となった。

現行以上の患者の自己負担には反対

 医療・介護における患者負担を増やす政策が相次ぐ中、1〜3割の窓口負担に上乗せする「受診時定額負担」の導入には、医科は過半数が反対した。患者の窓口負担割合をどうするかについては、子ども負担では医科・歯科とも「0割」が最も多く、それぞれ49.6%、64.7%だった。現役世代の負担では、医科・歯科とも「3割」が最も多く、過半数を占めた。高齢者の負担では、医科・歯科とも「1割」が最も多く、40.7%、46.4%だった。これらの回答に対し、保団連は「受診抑制や少子高齢化を踏まえ、現行以上の患者負担には反対、少なくとも子ども負担(現行2割負担)は解消・軽減すべきという姿勢を示しているのではないか」と見ている。

 調査ではマイナンバー制度についても質問している。レセプトやカルテへの利用拡大、健康保険証との一体化については、医科・歯科とも「反対」が最も多く、「どちらかと言えば反対」も含めると、それぞれ半数以上が反対している。マイナンバーカード(個人番号)と健康保険証との一体化についても、医科・歯科とも「反対」が最も多く、医科42.4%、歯科36.0%だった。

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